水屋七宝

遠く故郷を離れて 幾数年 私は海を見ることがなかった




白い砂浜 黒い海 浮かぶ月は 私を見つめる瞳




捨てたもののうちのひとつ まだ あの夜に恋い焦がれている




白い歯 黒い唾液 私を見つめる瞳は 呼んでいる




ただいま 海よ




憧れた 波は 追い返すように 誘うように焦らす




なんて美しい音色でしょう 血潮の音よ 鼓動よ




私は今なき殻でできた ナラカのうえに立っているわ




私を捨てた あの人を 私は追って 杭を立てるの




裸足のこころを 波が撫でる 慰めるように 味わうように




あなたはいつも 見ててくれたね




私ももうすぐ あなたの隣を巡る




ああ ああ ひどく熱い




でも もういいの 歩くのは もうたくさん




出会えたことに 感謝をしましょう




かなった恋を 報せましょう




約束どおり 私は帰ってきた




約束してね 還るから




白い砂浜 白い貝殻 白い骨 白い月 




瞬く空は 無数の星々




瞳はいつも 空から

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水屋七宝 @mizumari

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