Episode2 Voice Memory

話すのが苦手だ。人の目を見るのが苦手だ。人と関わるのが苦手だ。

人間は信じられない。だから、心を閉ざす、、、



私の朝は六時から始まる。起きて部屋着に着替える。ご飯を食べる。

部屋で本を読んだり、少し勉強したり、スマホでゲームをしたりする。

昼ご飯を食べる。部屋で運動をする。夜ご飯を食べる。十時に寝る。一日終了。

こんな毎日を繰り返している。最後に人と話したのいつだっけ?忘れた、、、


それは7月の暑い日だった。ネットを見ていた私は一つの広告を見つけた。それは二人の男の子による愛好会(?)の広告だった。いつもなら見向きもしない広告に私はなぜか惹かれた。書いてある住所を調べ、何年ぶりかの外に飛び出した。


新宿のマンションの一角、6階まで上がり、ドアを開く。

「何だ?何か用か?」

私が入ると同時に男の子が話しかけてきた。

{ここでは何をやっているのですか?}

紙に書いて聞く。

「お前、喋れないのか?」

{声は出るけど、久しぶりだから上手く話せないの}

「そうか。まぁかけろ。」

{ありがとう}

それから男の子はこの場所が自分たちの活動拠点であること、自分たちが世界を変えようとしていることなどを話してくれた。

{あなたがすごい人なのは分かったわ。世界を変えるの頑張ってね。}

「おい、どこいくんだよ。お前、ここに入るために来たんじゃねえの?」

{あなたの考えはすごいと思う。でも私に特殊な力は無いわ。}

「そうなのか。でも不思議だ。お前からは俺達と同じ匂いがする。」

{気のせいよ。}

「不問。こいつが違うって言ってるから違うんじゃねぇか?」

「あぁ…そうだな…悪かった。」


帰ろうとした時だった。外から爆音が鳴り響いた。

「何だ⁈」

「力!見に行くぞ!あんたもな。」

{なんで?}

「お前は絶対何か隠してる。」

決めつけは良くないと思うんだが…。


外に出ると大きな煙がデパートを覆っていた。

「どうする不問。中には人が居るはずだ。俺たちの力で助けられるんじゃないか?」

「次いつ爆発が起きるかわからない。そこに俺はともかく、お前は連れていけない。」

{…爆発が起きる時間と場所が分かればいいの?}

「そうだ。何かアイディアがあるのか?」

{ちょっと…ね。}

「よし。やってみよう。やり方を教えろ。」


「おい、坊主。何してんだ!危ないから下がりなさい!」

「中にお母さんが居るんだ!助けないと!」

「いま、警察が助けるから大丈夫だよ。」

「ほんと?犯人が誰かわかってるの?」

「そうだよ。」

「良かった!この事件、三年前の事件とそっくりだから、犯人同じ人だって思ってたんだけど、お兄さん気づいてたんだね!」

「!君、頭いいね。確かに同一人物だ。」

「でしょ?」


{不問さん。力さんって演技上手いですね。}

「あのガタイからは考えられないよな。しかし、犯人がわかったところでどうするんだ?」

{三年前。池袋で起こったデパート立てこもり事件の犯人はとても真面目で几帳面な人物。犯行も計画性があった。そして、今回の最初の爆発の位置からするに前回と同じ手をつかっている。}

「すごいな。そんなこと覚えているのか。」

{忘れられないだけ。}

「不問!」

「力。これから中に入る。覚悟はいいな。」

「おうよ!」

{別に覚悟しなくても大丈夫よ。わたしのデータに狂いはないわ。絶対にかすり傷ひとつつかないから。}


デパートの構造、前回のやり口、犯人の几帳面さ、全ては計算できる。

「天才中学生なめんじゃないわよ。」

「「!!!」」

「喋った…」

「喋ったな…」

{早く入って。それと、私が踏んだ地面以外踏んじゃダメだから。}

「「了解!」」


小さい頃からずっと虐待されていた。

きもちわるい。悪魔の子。

人間じゃない。

学校でもイジメられて、もう人が信じられない。

だから、自分のデータだけを信じる。

だけど、この人たちは私を信じた。嫌がらなかった。

少し、信じてもいいかな。


犯人が潜伏しているだろう最上階に着いた。

「本当に予想通りの時間と場所で爆発しやがった。」

「あんた。一体何者なんだ。」

私は…

「私は八雲和音。見たもの、聞いたもの、全てを記憶する。そこから導く答えはスーパーコンピューターより正確よ。今は中学三年。学校は行ってない。貴方達は私を信じた。初めて。嬉しかったわ。人質を助けたら、貴方達のチームに入りたい。」

「大歓迎だぜ!よろしくな、和音!」

「じゃぁ、さっさと片付けますか。」

「おう!」


無事に全員の救出が完了した。私の歌の出番がなくてよかった。とりあえず今は、

「和音ー!飯ー!」

「寿司でも食いに行くぞー!」

この人たちと一緒に生活してみるのも悪くない。

「今行く。不問、力。」

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Bad Town @ItsukiOsaka040508

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