第10話 風子 最年少最短距離での育成所長になる
風子のひらめきと才知と努力が報われたのは当然の成り行きであった。
育成所長に抜擢されたのは、風子26歳。
日本の最大手の保険勧誘員八万五千人の中で、最年少最短距離で育成所長に上り詰めたのである。このことは実際、読売新聞上にも出たほどの快挙でもあった。
育成所長として、他の会社の講演依頼も多くなった。研修会場を入ると
「へーえ、あの人が育成所長?あんなに小さいのに……まるで、中学生みたい!エッ
結婚しているの!?」
「良く、ベラベラ話すわねえ……でも、解りやすいいじゃない?……さすがネ!」
「うん、どこでも評判よ!……話が面白くて、眠くならないし、内容が的確なのよ」
「気っ風も良いらしいよ、この間ご馳走になった人から聞いたのよ、羨ましかったわ」
「それにしても、26歳の育成所長なんて考えられないことが、ここの小さい支店で出たので、上の人たちはみなさんご機嫌よ!当り前でしょうけど……」
「でも、先輩おばさん達、悔しいでしょうネ」
「そうでもないみたいよ、ヤスダのおばちゃんなんか、自分が育てたのだ!って、誇らしげに言っていたわよ」
「それもそうネ!本当に見習わなくっちゃあ……私たちの誇りよね!」
等々、もう、会社は蜂の巣を突いたような騒ぎであった。
この頃、風子の年収は何と、1200万円だから、目標としていた、安田絹代おばちゃんの給料17万円をはるかに超えることになっていた。
育成所長が8年間続いた。
しかし、身も心もすり減らすような過度な働きが続くと、体のバランスが取れずに、とうとう倒れてしまった。
、バセドー氏病にかかり入院しなくてはならなかった。病気には勝てない。
育成中の社員を他の育成所長に預ける形で円満退社となった。
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