第6話 結婚そして産婦人科での失敗
風子21歳、内川25歳、仕事のできる者同士がお互いに仕事上で駆け落ち同前に結婚したようなものであった。
妊娠を期に会社を辞めた。わずか三年足らずだったが、好きな人の子供を産むのだから、意気揚々として会社を辞めることに悔いはなかった。
……ここで、お笑いを一つ……
これは、本当にお笑いかと思うが、妊娠の兆しがあり産婦人科に診察に初めて行った時の事である。
何をするのも初めてはあるのだが、女性が産婦人科に診察に行くのは、当たり前の事であるが、そのこと自体、嬉し恥ずかし、形のある侮辱やジレンマに突き当たる。
ほんとうのお笑いにも匹敵するようなことであるが、風子は、医師の外診が終わり、続き部屋に行くように指示された。
若い看護婦さんに付いて部屋に行くと
「下着を脱いで準備してください」と、事務的に云って出て行った。
一人取り残された風子は初めて見る大きな奇妙な器械に戸惑った、そのベッドでもない器械の向こうは白いカーテンでさえぎられていた。
(準備してくれと云うが、どうするのだろう?)
風子はしばらく考え、『下着を脱いでくださいと云われた』診て貰うのだから……思い切って裸になった。
少し斜めになっている変な器械の台の上に乗るが……さて、どうしたものか?どうするのかしら全然見当がつかない。
傾斜している台の先に両手を置けるぐらいの肘掛のようなくぼみがさらにある。
そこに両手を置くと、ちょうど顔の前に洗面器のような楕円形の入れ物があるので、
きっと、吐き気のある人の為のものだろうと考えてみたり、なぜ、女はこのような侮辱的な様子を強いられるのだろう……といろいろ思いながらも、変な姿勢で待っていると、
先生と看護婦がやって来るやいなや、あっけに取られて立ちすくんでいるのが雰囲気で分かった。若い看護婦が笑い転げていると、すぐ、婦長らしい人が来て
「まあ、何しているのですか!反対、逆ですよ!あなたの手を置いている所は足を置くところです!下着も全部脱がないでも下のパンツだけで良いのですよ!」
……と、言いながらも、その看護婦長も思わず自分の体を折り曲げてしゃがみこみ笑いを抑えるようにしていた。先生はいつの間にかいなかった。
……何と……賢い風子にとって、このような無知な失敗は自分でも理解が出来ないほどであった。
子供を産むためにこのような最初の失敗もあったが女の子、男の子2人の子どもに恵まれた。
だがこれから、風子の予想もしない日々が始まる。
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