第14話 それが女の子の言う事か


 ヒナミ達のお着替えが終わって部屋には落ち着いた空気が戻ってきた。

 フェリアはすっかりゲームの方が気に入ったようだ。床にごろごろと寝転がって携帯ゲームするフェリアを置いて、俺はヒナミとセレトと一緒にアニメの鑑賞会を続行することにする。

 騒ぐ奴がいないと静かな物だ。落ち着いて見ることが出来る……

 と思っていたら、フェリアがやってきてパーティーインした。やはりみんなと一緒がいいようだ。ここにはのけものはいない。

 何本かを見終わったところで隣からヒナミが訊いてきた。


「魔王様はいつもこうやって見聞を広めておられるんですか?」

「ああ、そうだ」

「凄いです。本に載っていないことをいっぱい知れました」

「そうか?」


 フェリアも喜んでいる。セレトも弾んでいるようだ。

 俺はアニメがそんなに凄いとは思っていないが、本をメインに読んでいるヒナミ達にはそう思えるようだった。

 アニメを見ているだけで夜が来てしまった。何て日だ。しかもこれだけ見てまだまだ残っているのだから恐ろしいものだ。どれだけあるんだよ、アニメ。

 さすがに疲れたので一時中断だ。みんなで一緒に晩飯にすることにする。

 弁当に俺はもう飽きたかと思っていたが、三人はおいしそうに食べていた。

 今日の時計の針が残り数時間になっていて、俺は気になることを訊くことにした。


「お前ら、今日はいつまでいるつもりなんだ?」


 そろそろ中学生は家に帰る時間じゃないかと俺は思っていたのだが……ヒナミの答えはこうだった。


「泊まっていくつもりですけど」

「え?」

「え???」

「「…………」」


 お互いにとって意外な答えだったようだ。場を沈黙が支配してしまう。

 セレトがぽつりと呟いた。


「二連休」

「うん、二連休だな」


 どうやら三人は泊まっていくつもりのようだった。

 ヒナミは改めて問いかけてくる。


「駄目でしょうか?」

「お姉には許可もらったんですけど」


 フェリアも追随してくる。二人の言葉に俺はしどろもどろ。

 何を許可しているんだお姉ちゃん。規則に厳しいしっかり者の生徒会長だと思っていたのに。

 もっともフィリスはこっちの世界のことを知らないから、俺がこっちでも城に住んでいると思ったのかもしれないし、単に妹の希望に押し切られたのかもしれない。

 ともあれ今度答えを出さないといけないのは俺の方だった。

 向こうが許可している以上、こっちで駄目だよと断るのも何だか気が引けた。それでも精一杯抵抗してみる。


「いや、別にいいけど。さすがに下着の替えまでは家に無いぞ」

「それなら持ってきてるから大丈夫です」

「部屋着は持ってきてなかったのに?」

「服は嵩張るし良いかなと思ったんですけど……」


 三人が目配せを交し合う。どうやら三人で相談して何を持っていくか決めていたようだ。

 俺としては特に断る理由は無かった。倫理的な問題はあるが、部屋なら空いている部屋があるし、何も同じ部屋で寝ようぜと言っているわけじゃない。


 同じ部屋で寝るわけじゃないから……良いんだよな?


 ごくりと唾を呑み込んでしまう。

 三人はとても前向きな期待の眼差しをしている。そんなこと駄目だよと誰も説得して止めてくれる人がいなかった。


「じゃあ、泊まっていくといいよ」


 俺は仕方なく……本当に仕方なく、快く了承することにしたのだった。

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