第16話 会見

「巨大なセルリアンがこっちに来るわよっ!」


キンシコウが注意を促す。


「大丈夫です...。戦闘モード...」


リカオンの掛けた透明なゴーグルには

様々な数字が書かれてる。


「システム...正常。

プロトコル値、2.36…

座標確認、標準射程、よし」


ブツブツと呟く。



「ライトキャノン...!」


右手に握った銃をセルリアンに向けて発射した。


青白い光がセルリアンに当たると

爆発して、その姿も無くなっていた。


(ありがとうございます…

藍那さん...)


リカオンはハンターの中で頭角を表していた。



そんなある日のこと...

図書館に1人の来客があった。



「かばん、いるか...?」


「あっ!!」


その声を真っ先に聞き付けたのはサーバルだった。


「かばんちゃん、かばんちゃん!

早く早く!!」


「どうしたのサーバルちゃ...」


「久しぶり。元気にしてたか?」


「日比谷さん...!」


久しぶりの再開に喜びを禁じえなかった。


「何しに来たんですか?」


「込み入ってお願いがあってね」






「フレンズを代表してかばんに

“ほんど”で共同記者会見...!?」


その情報をサーバルから聞いた博士は驚いて声を上げた。


「何故なのです!なぜ島の長である我々ではないのですか!」


「羨ましいのです...」


「へへーん!私も明日行くんだ!」


サーバルは2人に自慢げに話した。

悔しそうな顔が印象的だった。




日比谷と共に、かばんとサーバルは

数ヶ月ぶりに、ほんどに向かった。


港につき車に乗り換えると、

「いつもの感じでいいから」と日比谷に言われた。

だが、緊張は解けなかった。


あっという間に、NTC本社に到着し

時間通りに記者会見は始まった。


頭を下げながら会見場に入ると、

フラッシュが一斉に炊かれた。


頭を下げながら入る。


「うわぁー...すごい...」


小声でサーバルが感嘆とする。

流石の彼女も大声で叫べない。


左からサーバル、かばんで真ん中に日比谷、板橋、横山の順で着席した。

すぐに、日比谷から挨拶があった。


「本日お集まりの皆さん。

我々はフレンズが持つサンドスターの

効果を研究してきました。

そして、遂に、国民の皆様に向け試薬品の提供を始める事となりました。

この場を借りてフレンズの代表として

協力してもらった、二人にお礼を申し上げます」


サーバルとかばんに頭を下げる。

その姿は実に誠実だった。


「社長から、詳しい説明を致します」


発言権を板橋に譲った。


「えー、試験薬については、厚生労働省の認可を受け...」


長々と印刷された紙を読み上げた。

横山も軽く説明し終わると、日比谷は

かばんに発言するよう腕をトントンとし、合図した。


「えっと...、僕と同じ人間の方が

多く救われれば、僕達も協力したかいがあります。フレンズと人間、一緒に良い未来を作って行ければ、いいなって思います」


丁寧に自分の気持ちを述べた。

記者たちからの質疑応答の時間になると、予想していた通りフレンズ2人に質問が飛んだ。


「人間とフレンズはどう違うのか」


「NTCと戦ったのに何故協力するのか」


中には、「この人達に恨みはないんですか」という質問もあった。


日比谷達が自由奔放な記者達の質問に

頭を掻いてると、サーバルが積極的に

答え始めた。


「わかんないや!」


その答えが一番の神対応であり、

的を射たとも言える回答だった。



逆に彼女によりタジタジになった記者達は質問をするのを控え、終了予定時刻の

数分前には会見が終わってしまった。



会見終了後、日比谷はかばんと二人きりで話したいことがあると、誘った。


社屋の屋上、俄雨でもあったのか、

地面が少し濡れていた。


海の方向を眺めながら、日比谷は口を開いた。


「かばん、これから、サンドスターの

研究でまたお世話になるかもしれない。

その時はよろしく頼むな」


「もちろんです。約束しましたから。

日比谷さんの為なら、是非協力しますよ」


「ありがとう。本当に」


照れくさそうに笑った。


「かばん...、パークはどうするつもりだい?」


「今のままで...、丁度いいと思います。ヒトが多く来られても、困っちゃいますし」


「じゃあ、NTCとしてパークの整備を

するよ。

君達も多少便利になれば...」


「ありがとうございます」


「...ハァー、君みたいなヒトがこの国のトップだったらなぁ」


独り言の様に呟いた。


「僕なんて...、何も特別じゃないし、

そんなトップだなんて務まりませんよ」


「謙遜することないよ。

君は賢いし、優しい。リーダー素質がある。それは俺が保証する」


「あはは...」


何だか恥ずかしくて作り笑いを浮かべた。


「君はこれからどうする?

俺はこの薬で、皆が病気で死ぬことの無い未来を作る」


「僕は...、僕達、けものの未来は...

永遠に平和で、楽しく、暮らすことですかね」


日比谷に向かって微笑んだ。

彼もまた笑ってみせた。


「おーい!かばんちゃん!」


その声で2人は後ろを振り向いた。

サーバルが駆け寄って来た。


「サーバルちゃん...」


微笑ましいなと、日比谷は思った。

ふと顔を前に向けると...


「おっ」


かばんとサーバルもその景色を見た。

建物が立ち並ぶ都会の風景。

その合間から、絵に描いたような綺麗な虹がかかっていた。




END

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

けものの未来 みずかん @Yanato383

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ