第7話 飛躍

日が落ちた夜頃、図書館西の森付近


「オラオラオラオラァッ!!!!!!

アイドル様のお通りじゃあっ!!!」


彼女は一応、マーゲイである。

アイドルのマネージャーとして道中の職員を全員なぎ倒して行った。


「あ、あの、マーゲイ?倒してくれるのはありがたいけど...」


恐縮した様子でプリンセスが声を掛けた。


「ちょっとやり過ぎじゃないか...?」


コウテイも不安視する。


「戦わせてくれよ~」


「私達も力になりますよ…?」


イワビーとジェーンは戦っても良い意志を示す。


「マーゲイこわいー」


ドン引きした顔を浮かべながら、ド直球な言葉をフルルが投げかける。通常運転だ。


マーゲイは後ろ向きに歩きながら、話した。


「いえいえ...、アイドルを戦わせるなんてとんでもない!万が一怪我とかしたらどうするんですか?それに可愛さに見とれたヒトがあなた達を誘拐したらどうするんですか!事案発生ですよ!」


プリンセスは困惑した顔を隠しきれない。


「でも...、あなた一人で大変じゃ...」


「お構いありません。自分の身は自分で守り、PPPの身も自分で守ります」


やけに自信たっぷりな言い方だった。


その森の数キロ先に居たのは...


(姉貴は本社で脳の研究...、オレは派遣で臨時キャンプ地の管理人か...

オレも研究したいで...)


つまらなそうな顔を浮かべた。


「・・・にしても、気絶して運ばれてくる奴多いやっちゃなぁ。解せへんわ」


「横山さん」


「なんや?」


「ベッドが一杯です...」


「何言うとんねん、どうせ重傷やないやろ。適当に寝かしつけとけばええやろ」


「わ、わかりました...」


頭を下げて去っていった。


「あーもうダルいなぁ、全く...」


すぐさま別の職員が駆け寄ってきた。


「よ、横山さん!レーダーに生体反応が!半径5キロ圏内に!フレンズと思われます!」


「なんやて...?」





「ねぇねぇー、何か向こうに明かりが見えるよ?」


フルルがマーゲイの肩を叩き知らせた。


「アレは...?」


「もしかしたら、連中かもしれないな」


コウテイは腕を組んで言った。


「確か、図書館はこの先でしたよね。

避けて通った方がいいのでは?」


「ジェーン、お前はそれでいいのか?

ロックにかっ飛ばしたいけどなぁ...」


「無駄な戦闘は控えるべきですよ」


ジェーンとイワビーが軽い言い争いを

している時、プリンセスはマーゲイの横で、


「もしかしたら、捕えられてるフレンズがいるかもしれないわ。マーゲイ、私達に出来る事があるんじゃないかしら?」


そう諭したのだった。


「プリンセスさんがそう言うのなら...協力しますよ」


マーゲイは肯いた。


「何か武器あんのか?」


イワビーが突拍子なく尋ねた。


「マイクならあるよー」


フルルは何故かマイクを持ち出していた。


「フルル!そんなの持ってたって意味無いでしょ?それにイワビー、武器だなんて怪我したらどうするの?」


「ジェーン、実際アイツらは仲間をさらったんだぞ?怪我の一つや二つ食らわせてもいいんじゃないか?」


「そんなのダメに決まってるでしょ!」


「じゃあお前は子守唄でも歌って眠らすのか?」


「二人とも言い争いをするんじゃない」


コウテイが二人の言い争いを止めた。


「そうよ。私達はチーム。みんなが連携してないとダメじゃない。マーゲイ」


「は、はい?」


プリンセスの指名に一瞬驚き顔を見せる。


「作戦を考えて」


「作戦...」


マーゲイは目を閉じて考えを巡らせた。

ふと、ポケットに手を入れた。





「ええか?至急警備体制を取るんや。

相手は6人や。半端ない力の持ち主かもしれへんで」


横山は使える職員に武装させ、警戒態勢を敷いた。


(さあ、どっこからでもかかってこいや...)





スッ


「ん?」


ある職員が物音で気づいた。


(なんだ?今一瞬影みたいなのが...

見間違いかな?)



「こちらジェーン、敷地内に侵入しました」


大木の木の上から状況を見つつ、マーゲイはたまたま持ち合わせていたワイヤレスイヤホンで指示を出した。


「了解、イワビーさん取れますか!」



「言われた通りの地点から侵入したぜ。

まだ戦えないのか?」


「イワビーさん、落ち着いて私の指示に従ってください!えーっと、コウテイさん?」


「こっちも大丈夫...」


「わかりました!では、プリンセスさん」


「準備完了よ。後はフルルだけど…」


「フルルさん、応答してください !」


プリンセスが一番不安に思っていたのはフルルだ。彼女は話を聞いていない事が多い。


「ねぇねぇー」


「ん?」


後ろから袖を引っ張られた。


「何か食べ物持ってない?」


「...」


職員はポケットの中を探った。


「これしかないよ」


「なにこれー」


「これはガムって言ってな、ずっと噛み続ける食べ物だ」


「へぇー。おもしろーい」


フルルは職員からガムを受け取った。


「味が無くなったらちゃんと紙に包んで捨てるんだぞ。ところで、君はなんのフレン...、ん?」


口の中を動かすフルルを見る。


「あああああああ!!!!

フ、フ、フフ、フ、フレンズ!?」


「そんな大声出さないでよー」




「あーっ...もう...」


プリンセスは両手で顔を覆った。

その声が聞こえたのだ。


「やっちまったなぁ...」


「フルルったら...」


イワビーとジェーンは呆れた。


「マーゲイ、聞こえるか。フルルが囮になってる今がチャンスだ。実行する!」


「わかりました!コウテイさん!やっちゃってください!」


コウテイは自身の片腕に力を込め、発電機を破壊し始めた。


一方


「なんやねん。ペンギンか?」


「フンボルトペンギンのフルルだよ」


(見るからに弱そうなやっちゃな...

せや、ここは...)


「ワイは有馬ありまや。な、これいるか?」


関西出身らしくアメを取り出し、彼女にあげた。


「うわぁ、ありがとう!」


「そういえば、あんた一人で来たんか?」


「ちがうよ。プリンセスと、コウテイとイワビーと...」


フルルが全員の名前を暴露している時、電気が停電した。

辺りが一瞬で暗くなった。


「なるほどなぁ。目くらまし作戦か。

お前ら、懐中電灯でコイツの仲間を探すんや!縄で括りつけとけ」


「なーに?かいちゅーでんとーって?」


そのセリフを聞き思わず、笑った。


「なんや、懐中電灯も知らんのか?

それはホンマに誤算やったなぁ...」




「なんだよ...なんも見えねえじゃねえか!」


「こんなに暗くなるの?」


「なんとか壊したけど...」


「物陰に隠れながら進むしかないわね....、あれは...」


空いた段ボールを見つけたプリンセスはその中に入り行動する事にした。




「...!!ちょっ!!」


背後から網で捕えられたのはジェーンだった。背後の警戒が疎かになっていたのが原因だった。



「ジェーンさん!?」


マーゲイが声を上げた。


コウテイはその声を聞き救出に向かったのだが...


「...!」



「は、離せ!!」




「非常用電源を作動させい!」


一斉に明かりが点灯した。

真ん中には捕えられた4人が縄で縛り付けられていた。


「ホンマ無謀なペンギンさん達やな。

手間かけさせやがって...」


「これからどうするんだよ!」


イワビーは剣幕な様子で言った。


「どないしよっかなー...

お前らもフレンズ共々、本土送りや」



プリンセスは箱の中からその様子を見ていた。


(どうすればいいのよ...!!)


絶体絶命のピンチだ。

マーゲイも頭を悩ませていた。


「あーっ...、どうすれば...」


その時である。


1人の職員が違和感に気付いた。


上空から水滴みたいなものが落ち、顔面に当たったのだ。


「臭っ!なんだこれっ!」


突然大騒ぎし始めた。


「なんやねん、唐突に騒ぎやがって」


「横山さん!空からなんか!」


「空?」


上を見上げると、紅白の...


「やあああぁ!みんなぁ!」


「ふぅ...、大勢いるみたいね...」


「ウケるんですけど!」



「次から次になんや!」


「横山さん、恐らく、アルパカと...

トキと...、えーっとあれは...よくわかんないですけど、多分なんかの鳥です」


小さな声で耳打ちした。


「フルル、マイクを貸して!」


ジェーンは手をむごむご動かし、

彼女のポケットからマイクを手に入れた。


「何人来ても同じや!捕まえろ!」


「トキさん!!」


マイクをジェーンは投げた。

放物線を描き、トキの元に届いた。


「ショウジョウ、デュエットよ」


「かしこまっ!」


アルパカは咄嗟に耳栓を入れた。



““わぁ~たぁ~しぃ~わぁ〜トォォ〜〜キィィ~~♪””



「何や!?耳が腐るでっ!」


苦しい顔を浮かべ、耳を塞ぐがキーンと不快音身体に伝わる。


「ああああっ...」


「うるせえっ!!」


「耳が痛いっ...」


「脳が腐りそうだ...」


一気にその場が阿鼻叫喚と化した。

アルパカはその隙に縄を解いた。

ニコニコ笑顔を浮かべながら、安全な場所へ導いたのだった。


一方でプリンセスは、段ボールの中で

気絶していた。


マーゲイも初めてPPP以外で鼻血を出した。




歌い終わると、殆どの職員が気を失っていた。


「ホンマ...、ああ...」


頭を抑えながら横山は立ち上がった。


「なに?」


「もう一曲歌ってもいいんですけど?」


「や、やめてくれ...。フ、フレンズはそ、そこの小屋の中におる...

好きなだけ解放しろっ...」


既にアルパカとコウテイ達が檻のフレンズを解放していた。


「あれぇ?スナネコちゃん?」


「あー、ありがとうございますー」


「あなたも捕えられてたんだねぇ…

ツチノコちゃんはぁ?」


「じつは...」





NTC環境研究所にて...


「うぅ...」


「ここは...」


ライオンとヘラジカは目を覚まし、お互いに顔を見た。

椅子に固定され、動くことが出来ない。

正面にはテレビモニターがある。

突然画面に人の姿が映し出された。


「こんにちは!横山藍那よこやまあいなです!

これから、あなた達にはNTCの一員になってもらいまーす!」



その二人の様子をモニタリングしていたのは上野と横山だった。


「フレンズを洗脳出来るのかい?」


「任せてくださいよ。この実験、脳科学者として、絶対に成功させますから!」


「君には期待しているよ…」

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