第7話 元カレの浮気

私が社会人になると、会える時間が一気に減った。


私の残業が多かったこともあるが、アパレル企業に務める亮は、週末に取り扱い店舗に行くことも多かった。


私が学生の間は、亮の平日休みに何も問題なかったが、私が社会人になってから、すれ違いは必然的に多くなってしまった。


なるべく時間を作って会うようには心掛けたものの、会う約束したをしていたその日に、ドタキャンしてしまうことも度々あった。


新卒で慣れないことだらけな上に、業界柄残業は避けられないものでもあった。


そして何より、私も仕事が楽しかった。


もちろん、亮と一緒にいる時間は何よりも特別で、こんなにも大事な人はいなかった。


だが、よくある、仕事と恋人、どっちが大事なの?と質問されてしまうと、私はどっちも半分半分です、というのが本音だった。


結婚したい相手ではあるが、今プロポーズされるより、あと数年後が理想的だと思った。


それを女友達たちに言うと、あり得ない!何考えてるの?女が羨むような結婚相手がいるのに、贅沢すぎると罵倒されたものだった。


だが、そんな会話も全部、私たちの早とちりで、私は何様だったんだろうか。


思い返すのも痛かった。




私が亮の家に泊まりに行ったある日のことだった。


亮が先に眠ってしまい、テーブルの上に置かれた亮のメール着信音が鳴った。


いつもは全然気にしないのだが、この時はなんとなく気になってしまい、画面に映し出されたメールの文章を読んでしまったのが、間違いだった。


名前は表示されず、番号のままで、「亮くんがいないから寂しいよぅ。」とあったのだった。


それを読んだ瞬間、血の気がさーっと引いていった。


こういう、浮気しているらしいものを発見するのは、これが初めてだった。


私は、亮が浮気しているとは、微塵にも疑っていなかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る