第6話 元カレとの出会い

元彼の亮とは、学生時代に仲が良かった美咲が開いた社会人コンパで知り合った。


美咲が当時付き合っていた彼が、外資系アパレルに勤務している人で、その同僚達を誘ったというコンパだった。


アパレルとだけあって、みんなシンプルなのにどこか洒落たスーツを上手く着こなしていて、一番お洒落だと思ったのが亮だった。


顔はそこまでタイプではなかったのだが、ファッション、髪型、仕草は自分に一番似合っているものを身に付け、こなしている感じだった。


男らしくて、かっこよく映った。


顔がタイプではないのに一目惚れをするのは、亮が初めてだった。


それ位、私にしては異例の出会いだった。




偶然向かい合わせに座り、自然と会話も弾み、すぐに後日2人で会う約束をした。


ダサい子と思われたくなくて、精一杯のお洒落をして会った。


新宿の夜景が綺麗なレストランを予約していてくれて、お金に余裕があるわけではない学生とのデートとはかけ離れていた。


週末だったので普段着だったのだが、ダウンベストとスニーカーを上手く着こなしていた。


学生にはない、社会人の、余裕がある態度、話し方、女の扱いに、私は一気に落ちた。


学生としか付き合ったりデートしたことがなかった当時の私には、新鮮すぎる存在で魅了された。


そんな気持ちを知ってか知らずか、私たちはこの後すぐ付き合うことになった。




交際は順調に進んでいった。


大学を卒業する前のクリスマス、亮は私にピンクサファイアが蝶の形のように四石並べられ、リングの周りにはダイヤモンドが入ったピンクゴールドの指輪をプレゼントしてくれた。


華奢なのに綺麗に淑やかに主張してくれて、私の何よりのお気に入りのジュエリーだった。


女友達からも可愛いと絶賛された。


亮からプレゼントされた時、いつかはダイヤだけのやつを渡すから、と、いずれはプロポーズをする、というようなことを仄めかされた。


そして、社会人1年目、指輪を貰ってから翌年のクリスマスには、お正月に両親に紹介したいからと、亮の実家に招かれた。


どんな服を着ていくか、どれだけ迷ったことだろう。


お正月だから着物を着ていくべきか、真剣に悩んだが、着慣れないものを着ていって、途中で帯が緩んできたり、暑くなってきたり、失敗することを恐れ、結局薄いベージュのワンピースに、白のカーディガンという格好にした。


ご両親には気に入ってもらえたようで、ランチでお邪魔するだけの予定が、晩ご飯にお寿司までご馳走になった。


女友達に両親の家にご挨拶に行ったことを報告すると、もう話題はプロポーズのタイミングだの、ウエディングドレスはどんなのにするかだの、そんな話で盛り上がった。


センスが良くて、彼女をプリンセスのように特別扱いしてくれる亮は、私にとって、自慢の彼氏だった。


そんな亮と、別れがやってきてしまったのが、今から半年前のことだ。

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