第2話


 ただいま銀髪赤眼の美男美女3人が私に向かいこうべを垂れております。

 どうしてこうなった……



 遡ること数十分前。

 目が覚めた私の前に現れた美人がいきなり泣き崩れた。

 ほっとけるわけがない。


「あの……」


 声を掛けようとして何と掛ければいいか分からなかった。

 分からなかったので、黙って美女の背中に手を添えて泣き止むまで寄り添う姿勢をとる。

 これくらいのボディータッチは女同士なら許されるだろう。


『泣き止んで貰わないと私の事も聞けないしな……』


 あと目の保養。


 同性の私ですら見惚れるほどだから仕方ない。

 何が仕方ないのかは分からないけど。


 しばらくして涙が止まり、美女が口を開いた。


「…お、はよう、ございます……」


 絞り出した声は鈴の様だ。

 ただ、第一声が朝の挨拶。


「おはようございます。落ち着きましたか?」


 律儀に挨拶を返し、様子を伺う。


「もう、大丈夫です 」


 コクリと頷くと満面の笑みをこちらに向ける。

 釣られて笑みを返せば、美女は少し顔を赤らめた。

 愛らしいの一言に尽きる。


「あの、聞いてもよろしいでしょうか?私は一体誰なのでしょう?」


 ずっと気になっていたことだ。

 記憶が無いことに焦ってはいないが気にはなる。


「……貴女は、私達の神様です 」


 ん?


 聞き間違えかともう一度問い返してみる。


「神様です!」


「……」


 力強い回答をありがとう。


 さすがに意味が分からない。


 固まっている私を見て美女は慌てて言葉を付け足す。


「申し訳ないありません。嬉しさのあまり言葉が端的になってしまいました 」


「そう…ですね。もう少し詳しくお聞かせ願います 」


 切実に。


「この場でお話しすることは可能ですが、場所を移動させて頂きたいのです。宜しいでしょうか?」


「大丈夫です 」


「恐れ入ります。それでは失礼いたします 」


 そう言うと美女は私をお姫様抱っこした。


 大丈夫じゃないです。

 ええ、全く、全然、大丈夫じゃないです。

 なぜ美女にお姫様抱っこされなければならないのだ。

 というかその華奢な体のどこにこんな力が……

 とりあえず降ろして欲しい!早急に!


「あの!自分で歩けますので降ろして下さい!」


「いいえ、素足のまま歩かせるわけにはいきませんので。諦めて下さい 」


「あ、はい 」


 美女にはっきり言われると従わなければと言う気持ちになる。

 そのまま大人しく運ばれてしまった。


 広い部屋に連れて来られる。

 煌びやかなその部屋の奥にあるさ3人掛けくらいの大きさのソファーに丁寧に座らされる。

 まるで宝物を扱うかの様に。


「ありがとうございます 」


 お礼は大事だ。

 例え不本意だとしても。


「いいえ、お礼なんて。私の方こそ貴女様と言葉を交わせるだけで、至上の喜びなのです!」


 これはダメなやつ。

 私の存在ってそれほど?


 そんなことを考えていると今入ってきたドアが開く。


 そこに立っていたのは高身長の美しい青年2人だった。

 年は20台前半くらい。

 顔立ちは先程の美女と同様に整っている。

 1人はやさい目元と口元にサラサラのストレートヘヤーをしており、まるでお伽話の王子様の様だ。

 もう1人はキリッとした目元にガッチリと筋肉が付いた身体、1人目が王子ならこちらは勇者様か。


 だがしかし、2人とも髪は白銀色、目は赤色だ。


 この配色が一般的なのか、最近の若者の流行なのか。


 そして2人は私の前まで来ると膝をつきこうべを垂れた。

 それに続くように先ほどの美女も2人の隣に並びこうべを垂れたのだ。


 ここで冒頭に戻る。


 今すぐここから逃げたい気持ちがいっぱいです。

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