模範的な避難者でなければいけないのだ

 その日の朝、僕は見事に二日酔いだった。


 数ヶ月前に娘が生まれた、その事柄そのものはとても喜ばしいことだった。そんな当たり前のことをあえて語る必要もない。だがどういうわけか、そういうタイミングで面倒な仕事が舞い込むものなのだ。人生というのは実に不条理に満ちている。


 守秘義務だとかそういったものがあるから詳しい事は書けないけれど、とにかくこの数ヶ月というもの、僕が所属するチームは馬車馬のように働き続けた。3頭の若い馬たちがよだれを垂らしながら、神経症の猿が組み立てたみたいにな荷車を曳いて、ろくでもないリーダーに鞭を打たれ、禿げ上がった営業部長の額から夏の太陽の日差しのように降り注ぐプレッシャーを受けて、それでもなお懸命に走り続けた。荷台の車軸が折れればダクトテープで応急処置をした。家に帰れば娘を風呂に入れた。御者が銃で撃たれれば鮮血が噴き出す胸の穴にダクトテープを貼り付けた。明け方に娘が泣いて起きれば彼女を抱きかかえて散歩に出かけ、マルクスの資本論を諳んじて寝かしつけた。ウイルス性のイボができればダクトテープで治療した。(僕自身の足の裏にできたイボのことだ。きっとストレスによるものだ。)


 そんなふうにして、あっという間に日々は過ぎ去った。僕たちが曳く荷馬車は迷走し、娘はすくすくと育っていった。生まれたばかりの赤ん坊は生まれたての宇宙と同じくらいに成長が速かった。


 そして僕たちのチームはようやく、ようやく積荷を目的地に降ろす事ができた。だからその夜、僕が少しばかり羽目を外してしまったのは仕方の無いことなんだと言い訳させて欲しい。控え目に言って忙し過ぎたんだ。僕たち3頭の若馬は空になった荷車を放り出すと、脇目もくれずに町の酒場へとなだれ込んだ。扉が軋む音の中に、娘の泣き声が紛れ込んで聞こえた気がした。だけど僕はその扉の先へ進むしかなかった。僕たちの体は、そして僕たちの心はもう限界だった。早急に脳味噌をアルコールでドロドロに溶かして弛めてやる必要があった。その混沌の中から僕たちは再び産まれるんだ。サナギの中から蛾が羽化するように、ぺしゃんこに潰されたアルミ缶が車のボディとしてリサイクルされるように。――だから一晩くらいそんな日があったって、鬼子母神さまも大目に見てくれるはずだ。きっと。たぶん。そうして僕らは合法的なゼリー状の生命体へと変身し、配線のこんがらがった脳味噌をぶら下げて、最終電車でそれぞれの自宅へ帰って行った。


 そして朝がやって来た。朝は誰の上にも等しくやってくる。生きてさえいれば、いや、死体の上にだって朝は訪れる。地球も太陽も平等だ。嫌になるほどに。残酷なほどに。


 僕はきちんと自宅のベッドの上で目を覚ました。どうやって帰ったか覚えてないけど、結果を見る限りはきちんと帰ったはずだ。きっと礼儀正しく家路についたのだと思いたい。気分は最悪だった。連日の激務による疲労と昨日のアセトアルデヒドを編み込んで作られたいばらの鎖が、僕の頭をぎりぎりと締め付けながらベッドに括り付けていた。僕はその鎖をなんとか引きちぎって体を起こし、おはようと妻に告げた。彼女はちらりとこちらを向いて微笑み、おはようと返し、視線をテレビに戻した。彼女から怒りの要素は感じられなかった。僕はその事実にとても安堵した。彼女の視線を追って、僕もテレビに目を向けた。


 お世辞にも大きいとは言えない液晶画面に、赤文字ゴシック体で書かれた大雨特別警報の文字が踊っていた。台風だ。数日前からちらほらと騒がれていたようだが、あまりの多忙さに天気を気にかける余裕などなかった。気象衛星が捉えた南北に一直線に伸びる雲の帯。その画面に新たに線状降雨帯という見慣れない文字が付け加えられた。


『ふたつの台風の影響により、線状降雨帯が形成されています。このように川の流水域に沿うように強い雨を降らせており、増水・氾濫の危険性が高まっています。引き続き厳重に警戒し、命を守る行動を最優先にしてください。』


気象予報士の解説が聞こえた。だけど寝ぼけた僕の脳味噌はその不吉さを理解することができなかった。それはまるで遥かモンゴルの草原から聞こえる馬の嘶きのようだった。姿は見えないし、音の輪郭もぼやけていた。耳を澄まさないと、風の音に紛れて聞きもらしてしまいそうだった。


 窓ガラス越しに外の様子を見てみると、確かに雨足は強いものの、過去に経験した台風ほどの脅威は感じられなかった。幼い頃、僕はよく九州にある母方の実家で夏休みを過ごしていた。そこは台風の本場とも言うべき地域だった。勢力を落とし息切れした老いぼれ台風などではなく、東シナ海で成長した、若々しく目鼻立ちのしっかりした本物の台風が来る場所だった。この程度で特別警報とは笑わせる、東京の人間はいちいち大袈裟なのだと、僕の記憶の中に住む叔父が溜め息を吐いた。


 僕と妻は画面の中でニュース・キャスターが大袈裟に川の水位をリポートするのをぼんやりと眺めていた。「水位が上がり、堤防から越水を始めています」と取って付けたような台詞が、やっぱり取って付けたような声と手振りを交えて語られていた。それは僕の心にさざ波ひとつ立てることはなかった。彼の言葉は大袈裟なだけで、魂は込もっていなかった。あるいはちゃんと魂は込められていたのかもしれないけれど、それはいくつもの中継局を経由するうちに、長旅を経た風船のようにしゅるしゅるとしぼんでしまったのかもしれない。


 ああ、会社に行かなきゃ、と僕は思った。社会人たるもの、台風なんかで休んでなんかいられない。そんなことは当たり前だ。一般常識と言って良い。だけど僕の体は何年も雨ざらしに放置された自転車みたいに動き出すのを拒んでいたし、頭にはどうしようもない棘の鎖が巻きつけられたままだった。このまま出社しても、去年の夏に沖縄旅行の土産だよと同僚からもらったシーサーの置物みたいに、デスクの前にちょこんと座っているくらいしかできないだろう。


 大雨特別警報、と僕は呟いた。テレビの中では命を守る行動を、とアナウンサーが繰り返していた。休んでしまえ、と天がささやいた。命を守るためならば、会社を休んでも許されるんじゃないかと僕は思った。今日は木曜日だ。週末までの残り2日で片付けるべき仕事量を考えれば、今日1日休んでも支障はないはずだ。不都合があれば土日を返上して取り戻せば良い。会社で仕事をするだけが夫の役割ではない。家族を危険から守ることこそ、最も優先されるべき事項のはずだ。一般常識?そんなものはモンゴルの草原の馬にでも食わせておけばいい。


 よし、決めた。


 そうして僕は半日だけ有給休暇を取得しようと決意した。目の前にはさっき叔父が記憶の奥から吐いた溜め息が漂っていたが、鼻から吸い込んで思い出という名の得体の知れない壺の中に放り込み、ダクトテープで厳重に封印を…いや、もう止めよう。


 ともかく、この特別大雨警報は二日酔いに苦しむ僕にとっての蜘蛛の糸だった。僕はその糸に飛びつくカンダタよろしく、スマートフォンに手を伸ばし、上司に電話をかけた。4回ほどの呼び出し音に続いて、聞き慣れたくないのに聞き慣れてしまった声が、もしもし、と耳元のスピーカーから聞こえてきた。


「おはようございます。どうも僕です、朝早くにすみません。」

『ああ、おはよう。どうした?』

「今日の午前中、お休みさせて頂きたいんですが。台風の影響で近くの川が増水しているようでして。」

『あん?台風つっても、こんなもんなら大したコトねぇだろ?』

「ですが大雨特別警報が出ていますし、小さい子供もいますので。例のプロジェクトも片付いたところです。スケジュールにも余裕があります。念のため様子を見させてください。」

 電話の向こうから、チッと露骨な舌打ちが聞こえた。

『いやいや、遅れないように早朝から出勤してるヤツもいるんだ。お前ばかり―』

『…ふん、好きにしな。査定には響くからな。』


 そんな言葉を最後に上司との通話はぷつりと断ち切られた。カップ1杯分の不満を添えて。彼は大雑把な人間だからなんて使わない。僕は深い溜め息をひとつ吐き、おんぼろ馬車は曳ききったのだから今日くらい好きに休ませてくれよ、と思った。だけど結果を考えれば好きにやらせてくれたわけだしなと、自分を納得させることにした。受話器からはプー、プーと、通話が切られたことを示す電子音が流れ続けていた。「査定には響くからな」という彼の言葉がこだましているように聞こえた。不吉な響きを振り払うように、僕はスマートフォンの通話アプリを終了した。


 よし、あと1時間寝よう。


 そうして僕は意識を手放し、温かな泥に沈みこんでいった。そこではナマズとキタキツネがぬるぬると、絡まり合うように踊っていた。僕も仲間に入れて欲しいと言うと、彼らは快く受け入れてくれた。それはとても親密な時間だった。この数ヶ月というもの、仕事と育児に追いたてられ続けた僕は、少しでも長くその泥の中の幸福な時間を貪りたかった。


 しばらくして妻の声が聞こえてきた。僕はその親密な泥の中から引きずり上げられた。これからナマズの持っていた初期型のプレイステーションとコントローラで、懐かしいテレビ・ゲームに興じようとしているところだったのに。


「寄生虫に気をつけてね。」と、別れ際にキタキツネは言った。「ほら、僕の体にもいるんだよ。」と。

「ありがとう、気を付けるよ。」と僕は答えた。

「攻略チャートを更新し続けるんだ。」

メガネの位置を直しながらナマズが言った。「いったい誰が作ったか知らないけど、このゲームはひどく意地悪くできている。状況はリアルタイムに、めまぐるしく変わっていく。目に見えるものに惑わされちゃいけない。隠されたパラメータの変化を感じ取るんだ。攻略チャートを更新し続けるんだ。」

「とても残念だよ。まだ一緒に遊べると思ったのに、もう行かなきゃならないだなんて。」と僕は言った。

「いいんだ。気にしなくていい。いいかい?ロールプレイだ。ロールプレイが君を助けてくれる。攻略チャートを更新し続けるんだ。誰かがそれに唾を吐きかけてくるかもしれない。でも気にしちゃあダメだ。ロールプレイを続けるんだ。」

 わかった、と僕はナマズに答えた。そう言わないとナマズの話は終わりそうにもなかったし、僕はもう行かなくちゃいけなかった。彼が語るゲームの内容からはあまり魅力的を感じ取れなかったけど、僕はそれについては何も言わないことにした。


 ナマズは満足そうに頷くと、「ナイスゲーム」と言った。彼はいつの間にかシルクハットを被り、しゃれたステッキを手に持っていた。僕も曖昧な笑いを浮かべて、また今度、と手を振ってその場を後にした。見上げた空の彼方から「ねぇ、起きて」と僕を現実に連れ戻そうとする妻の声が聞こえてきた。遠く、眠りの向こう側から。


「ねぇ、起きて?この地区、避難指示が出てるんだけど。」


 避難指示、と僕は繰り返した。上司との電話からは30分が経っていた。僕はもう1度、あの親密な泥の中に戻りたかった。もう少しだけでもいい、脳が痺れるような眠りを貪りたかった。だが会社への遅刻の理由は自然災害に対する警戒だった。たとえ便宜的にでも、僕はその責務を果たさなければならないのだろう。


 仕方がない、と僕は思った。大雨特別警報に備えるのだと言った以上、僕は今日1日、模範的な避難者でなければいけないのだ。牧羊犬に付き従う羊みたいに、従順な避難者を演じてやろうと思った。出社を遅らせる言い訳にもなるし、悪いことばかりじゃないはずだ。


 避難指示、と僕はもう一度、頭の中で繰り返した。それは避難勧告よりも上位のものだったか、下位のものだったか。そこに法的強制力は付随されるのか。具体的にどのような危機が迫っているのか。どこに避難すれば良いのか、あるいは避難しない方が良いのか。その避難所はここよりも安全なのか。車で行くべきか歩くべきか。何を持っていけば良いか。


 良いぞ、頭が働いてきた。


 覚醒していく意識と引き換えに、僕はもはやナマズとキタキツネ達からは遠く離れた現実まで戻って来ていた。馬鹿みたいな荷車とろくでもない上司と禿げ上がった太陽のある現実に。


 テレビでは河川が堤防を溢水したと報道していたが、その映像は静謐な深い森の中を流れる穏やかな沢を思わせた。川から溢れた水が木々の間をさらさらと這い、斜面を洗い流していた。それは人の命を奪うような危険なものには見えなかったし、その溢水地点も僕の住んでいる場所から30キロ以上離れた場所だっだ。命を守る行動を、とアナウンサーが言っていた。


 僕はインターネットによる情報収集を優先した。まずは避難指示の意味について調べた。法的な強制力はないが速やかに避難せよ、というようなことが解説されていた。だけどその言葉の本質は狡猾なネズミみたいに僕の手の中を滑り抜けて行った。なんだってこんな平穏な場所に、そんな物騒な指示が出されるんだろう?そんな疑問が僕の手の中に残された。だけど僕には模範的な避難民としてロールプレイをする義務がある。避難所へ行かなければと考えていた。


 そう、ロールプレイだ。


「なぁ妻、どうやら避難指示ってのはさっさと逃げろってことらしい。勧告より上だってさ。」

「なんと、そうだったのね。どうしたら良いかな?」

「いちおうの命令だし、素直に聞いておこうか。避難所なんて滅多に経験できるもんでもないしさ。」

「ふふん、それもそうね。」

「荷物は…うん、2日分の着替えと娘の紙おむつってところかな。下着とおむつは多めに持って行こう。」


 うん分かったと、妻はてきぱきと荷造りを始めた。心配性の彼女のことだから、少し多めの荷物になるだろうと僕は思った。僕の荷物はムーミンに出てくるスナフキンの持ち物くらいに少ない。「長い旅行に必要なのは大きなカバンじゃなく、口ずさめる一つの歌だ」と彼は言った。僕は長い旅行に行くわけじゃないけど、大きなカバンは必要ない。明日のパンツが一枚あれば大丈夫とまでは言わないが、小洒落た旅行に行く訳じゃないし、ましてやノルウェーにオーロラを観測しに行くわけでもない。夏用の部屋着を一掴み、リュックサックに突っ込めばそれでいいのだ。口ずさめる歌もあれば、なお良いのかもしれないけど。


 荷造りでの時間的猶予がある僕は情報収集を続け、避難所の場所を確認した。住んでいる町の名前と避難所というキーワードで検索すると、町のハザードマップがヒットした。この町に住んで3年、初めて目にするその地図によれば、僕のアパートは50センチ程度の水没が考えられるとのことだった。僕らは1階に住んでいたが、それでも床の高さは地面から50センチより上にあるように思えた、避難しなくても問題ないのかもしれない。だが過去のニュースを思い出す。洪水で孤立した人々。ボートやヘリコプターで救出される彼らを、あるいは膝まで水に浸かりながら歩いて行く彼らを、果たして模範的な避難者と呼べるだろうか?さらにハザードマップをよく見れば、周辺は水没深度2メートルの帯で囲まれていた。一度浸水が始まれば、この一帯は完全な孤立地帯になりうるのだ。周到に張り巡らされた、文字通りの水攻めだ。模範的な避難者であるならば、浸水が始まる前に避難しなければならない。


 避難することを改めて決意すると、次の問題は避難先の選定だった。最寄りの避難場所として指定されていたのは役所と小学校だった。より多くの情報が集まるであろう役所が良いのではないかと思ったが、予想浸水深度を表す色合いを見て我が目を疑い、もう一度地図を見て、素朴な感想を口にした。


 僕のアパートと同じ色じゃないか、と。


 果たして自宅と同等のリスクの場所へ避難する意味があるのだろうか、と僕は思った。そして奇しくも、この懸念は現実のものとなる。この15時間後に役所は浸水し、避難者数百名が孤立するのだ。なぜそんなところに役所を……と思わなくはないが、それを言えば僕も同等の場所に住んでいたわけであって、これ以上この話題には触れずにおこうと思う。さて、小学校だ。僕はその小学校を知っていた。それはちょうど、僕のランニングルート上にあったのだ。


 ランニングルートについて語ろう。僕の住むアパートから出発して300メートル先、なかなかハードな勾配を持った坂の上に神社があった。そこは今回の洪水の原因となった川を一望できる場所だ。神社の脇から川の堤防道路が、西へとおよそ4キロ続く。自宅から往復するとおよそ10キロとなり、トレーニングに最適だった。週末にそのルートを走るのが僕の習慣だった。小学校は、その神社の向かいにあった。つまり今いる場所よりも川に近づくことになる。妻に場所を伝えるとやはり抵抗感を見せた。しかしその小学校の海抜は高く、神社は古くから水害を受けていないことを示唆している。神様は安全な場所に祀るはずだ。一方で役所の海抜は低く、アパートと同程度であった。籠城戦を強いられることが懸念される。


 よし、と小学校への避難を決意し、移動手段を決定するために道路状況の確認に向かう。車で避難する途中に道路の冠水で立ち往生するような事態は避けたいものだ。外へ出てみれば、確かに雨は強いが、やはり特別警報や避難指示とはイメージが結びつかなかった。ハザードマップで2メートルの水没と予想されていた地点を見に行くが、冠水の兆候すら見受けられない。スーパーもドラッグストアも絶賛営業中だ。災害の気配する感じさせない、いつも通りの日常。だが『それでも避難はしておこう』という決意は揺るがない。行政は私の手元にない情報をも用いて判断を下しているはずだ。なにより出社の時間も先送りできる。


 自分も荷物を整理する。多めの下着とバッテリー代わりのパソコンと、充電器をリュックサックに詰め込む。長くて1日2日の話だろう、荷物など最小限で十分だ。


 よし出発だ、と妻の方を見れば、彼女は大量の荷物を抱えていた。リュックサックを背負い、両手にボストンバッグ2つを提げての仁王立ち。


 ステイ、妻よ。まるで夜逃げじゃないか。


「ねぇ、そんなに荷物いるのかな?」と僕が聞けば、

「当たり前でしょ?あなた赤ちゃんのお世話なめてんの?避難してから『ああ、アレ忘れた』なんてことになったら最悪だし、大体ね――」


そう捲し立てる妻に対し、僕はたじたじと「ああ、うん分かった。ごめんごめん、それでいいと思うよ」と答え、荷物を車に詰め込んだ。そう、幸いにも車移動なのだから、議論する時間の方が無駄だろう。スーツケースが混ざっていたら放り投げていたかもしれないが。


 そうして僕らは自宅を後にした。玄関の鍵をかける音が、がちゃりとやけに大きく響いて聞こえた。



 かくして僕らの短い避難生活は幕を開けたのだった。


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