第16話「ノーミスクリア、さもなくばゲームオーバー」
第二ステージも、やはり、ゲームの難易度そのものはたいしたことなかった。
敵キャラやアイテム、ギミックの種類は第一ステージよりも少し増えたが、慎重に進めていけば問題なくクリアできるレベルだった。
第三ステージ……第四ステージ……。
一つ、また一つと、シュウはステージをクリアしていく。
次のステージへ進むごとに、前のステージにはなかった仕掛けが現れる。
通常の陸上ステージよりも操作が難しくなりがちな、水中ステージ、空中ステージ、足場が滑る氷のステージ。
ほとんど立ち止まることを許されない強制スクロールステージ。
アイテムの使い方で頭を捻る謎解きステージ。
いくつもの部屋を行ったり戻ったりしてゴールへの道を探す迷路ステージ。
どれも、この手の横スクロールアクションゲームでは定番の趣向だったが、ステージが進むにつれ、ゲームの難易度は少しずつ、だが確実に上がっていった。
そうはいっても、各ステージのクリアは、決して難しいというほどのレベルではない。――集中力を切らさず、慎重に、落ち着いてプレイしてさえいれば。
「あっ……! 危ねっ……」
あわやというところで敵をかわし、シュウは荒く短い息をつく。
何も難しいポイントではなかったのに。
うっかり、踏んではいけない敵を踏んづけそうになってしまった。
集中力が、落ちてきている。
当然といえば当然だった。
ゲーム開始から、一度も休憩をはさまずプレイし続けているのだから。
たとえ敵のいない場所でじっとしていても、数秒後にはどこからか敵が現れ、近づいてくる。もしくは敵の攻撃が飛んでくる。
ゲームを一時停止する機能は存在しない。
ステージをクリアしたあとは、何もボタンを押さなくても勝手に次のステージへと進んでしまう。
そんなふうに、このゲームは、とことんプレイヤーの休憩を許さない仕様になっていたのだ。
募っていく疲労。
上がっていく難易度。
いつゲームオーバーになっても、おかしくはなかった。
それでもシュウは、リトルゲートを一つ、また一つと開け放って、次のステージへと進んでいった。
何度も何度もミスをしそうになったが、そのたび、かろうじて持ちこたえた。
(大丈夫――。いける。いけるぞ。この手のゲームは――僕の、いちばん“得意”なジャンルなんだから)
第十ステージに差し掛かると、いわゆる「初見殺し」と呼ばれる類のトラップが登場するようになった。
ゲームが始まった瞬間、上から敵キャラクターが落ちてきたり。
また、スタート地点に足場がなく、何も操作せずそのまま真っすぐ落ちていくと、その先に落とし穴があったり。
あるいは、一定時間無敵になれるアイテムが、出現した直後に手の届かないところへと転がっていき、それを取り逃すと敵の密集地帯を突破することが不可能となったり。
そのようなトラップを、シュウは勘と反射神経で攻略していった。
このゲームをプレイするのは初めてでも、トラップの種類自体はよくある発想のものだったので、ある程度の予想はつく。
普段からのゲーム好きが功を奏したといえた。
いつしか、シュウの思考は余計な回路をいっさい排除していた。
脳の中身が、ただひたすら、このゲームのプレイのために最適化された状態となっていた。
第十ステージ、クリア……。
第十一ステージ、クリア……。
第十二ステージ、クリア……。
そうして、シュウはとうとう、十三番目の最終ステージまでたどり着いた。
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