忘れる魔法
@blanetnoir
好きな人を忘れる方法があるなら教えてくれよ、とあなたがいう。
私にはその魔法があると、風の噂に聞いてきたらしい。
あまりの下らなさにため息が出た。
もし。
忘れる方法が本当にあったとして。
見事記憶をデリートできて。
その後またどこかで顔を合わせてしまったら。
不毛のループが始まるのではないか。
忘れたい理由なんて、人の数だけあるだろう。
どんな理由でも、“忘れたい”だなんて、きっとハッピーな動機でないことは分かる。
忘れることはできても、
あなたの心は変わらない。
いつ、どこで出会っても、
あなたは あの人を好きになる。
ティヤム、
あなたの瞳に流星群が降りしきる。
同じ出逢いを繰り返す。
あなたはそれでもいいのだろう、
完全に忘れたあなたはループに気づかないのだから。
繰り返す“はじめまして”、
外から見たらめまいを覚えるメリーバッドエンド。
あなたは繰り返す、
あの人に出逢えた悦びを、
あの人を愛する幸福を、
あの人に愛されない絶望を、
あの人を忘れたいと思う苦しみを。
あなたがそれでもいいと言うなら、
私はあなたに魔法をかけよう。
自分のかかえる愛で心がいっぱいの、
誰かがあなたを愛している気持ちに気づかない愚かなるあなたへ。
愛ゆえに盲目となったあなたの両目を、この両手で覆いながら耳元で囁く。
「次こそ幸せになれますように」
そして私のことも忘れるように。
誰だこんな噂を広めている奴は、
見つけ出して
なぜ知っているのかを問いたださなくては。
忘れる魔法 @blanetnoir
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