契約探偵の事件簿 1/3
名探偵に憧れていた。もちろん職業としての探偵ではない。
旅行先で会う様々な人、退屈な日常からほんの一時解き放たれる解放感、初めて尽くしの体験、普段は食べられない料理、
胸をときめかせる出会い。
そして……死体発見、外部への移動連絡手段の遮断、希望がそのまま絶望へと変わり、築きつつあった信頼関係が疑心暗鬼に変容する。
時を重ねる毎に増えていく死体と、減っていく容疑者。
ある者は狂い、ある者は恐怖の捌け口にされる。
そんな状況で、ある者が全員を集め、高らかに宣言する。
『犯人はあんただ!』…と。
「稀に、本当に極限られたケースですが、こちらの【予想】が外れる場合はあります」
「ほんとに!?」
「自分の寿命が後三日と分かっている人間は、時としてこちらの【予想】を越える行動を起こす事があるのです。要はあなた次第ですね」
自身を悪魔だと言う男(?)は完璧な営業スマイルで、そう説明した。
端正な顔立ちと、色白で短く整えられた銀髪、十代前半にしか見えない背の高さと体つきは確かにどこか現実感が無い。少し赤みがかかった紺のタキシードもそれを助長している。
ただ、そんな見た目より遥かに違和感を感じるのは、そいつの言う事を全く疑っていない僕自身なのだが…。
ここで現状を振り返ってみる。
大学の冬休みを利用し、とある推理小説の舞台になったという山荘に、二泊三日で訪れる事にした。
所謂聖地巡礼というやつだ。
一日目は何事も無かったが、次の日の朝、時間になっても起きてこないスタッフの一人をオーナーが起こしに行った所、そこにはスタッフの死体があった。
小説の中では幾度となく見てきた世界が現実に転がっている。
そんな状況で、僕にだけ見える悪魔が【契約】を持ちかけてきたのだ。
【契約】すれば一年寿命が縮み、三日後に死ぬ。
殺人鬼によって殺されるであろう事は明白で、それを理由に渋っていたら言われたのが【予想】外の可能性というわけだ。
だったら……僕の見たいものはこれしかない!
「犯人は誰か、この先も人を殺すなら、それは誰で、どんなトリックを使うか知りたい。金田陽介は【契約】します!」
憧れ続けた名探偵となって、三日先も生き続ける為、命がけの推理ショーが幕を開けた。
続く
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