徘徊俳諧

*玉泉院丸庭園にて

古庭に春忍び聞く水の音

冬名残り花芽着きたる古城かな


*深大寺寺領にて

紫陽花を井戸へ浮かべし梅雨模様

水田へ咲くは菖蒲か杜若

雨上がり街の色は濃く為りて 井戸へ浮かべし紫陽花の映ゆ

剣先に匂ふ重ねも破れけり 花の終はりの淋しさかな

武蔵野を野分の風と踏み荒らし 虚ろに過去を重ねて見けり

寒色と重ねて白く梅雨時に咲きたる花はさみしからずや


*鴫立庵にて

てふてふの眠りし祈りと戯れる

うねる海彼も見しかと目を澄ませ

てふてふの過去と戯る静けさに朝靄晴るる鴫立庵

うねる波彼も見しかと目を澄ませ鴫立沢を下りけり


*吉川英治記念館にて '19.3

奥多摩の故人好みし梅の木も時の病に見る影もなく

咲き初めし梅のレイヤを切株に重ねて嘗てを偲び見んとす


*虹の里にて '19.5

雷の轟き晴に霰降り遠き山から逃げる先なし

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海匣集 巡里恩琉 @kanataazuma

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