綿雨さんと下着

「ゆうくん、偉い!」

綿雨さんはそう言って優一の頭をなでなでした。

「ちょ、綿雨さん!そういうのはいいから……」

優一がそういうも、綿雨さんの手は止まらず、

「でも、頑張った分のご褒美は必要ですよね?」

と言って、満足そうに頭を撫でてくる。

いや、なぜご褒美をあげる側の方が満足しているんだ……。

そう思いながらも仕方なくなでなでされる。

「な、長くないですかね?」

優一がそう言っても「そんなことは無い」の一点張り。

ただただ、自分の洗濯物をたたむついでに、綿雨さんの分もたたんだだけなのだが、普段そういうことをしない分、喜ばれてしまったらしい。

「あの……まだ全部たたみ終わってないので、ご褒美の続きは後でいいですか?」

「いいですよ♡」

やっと離れてくれた……。

でも、何故かずっと見つめられている。

その目はまるで、ひとり立ちしようとしている赤ちゃんを見るような目だ。

「見られてるとやりにく……」

「大丈夫です、のーぷろぶれむ!」

それはこっちが決めることじゃ……。

心の中でそうツッコミながら、洗濯物の山に手を伸ばす。

掴んだのは、柔らかくて上質な素材、お山が左右に2つあり、ひも状のものも左右に付いている……。

これを掴んだのを見て、綿雨さんの顔がみるみるうちに赤くなっていく。

そう、優一が掴んだのは、綿雨さんの『ブラジャー』だ。

「っ!?」

目にも止まらぬ早さで優一からそれをかすめ取り、背中の後ろに隠す。

「こ、これは……その……別々のカゴに入れたはずなんだけど……見落としてたっていうか……その……」

なんとか弁解しようと真っ赤な顔でもごもごする綿雨さん、可愛い。

でも、優一は紳士な対応をする。

優一は、あくまで何も見ていない。

見たという事実は明確だが、それを口に出さなければ、見ていないのと同じなのだ。

「……」

だから、優一は黙ってほかの洗濯物に手を伸ばした。

「優一くん……」

綿雨さんは少し涙ぐんだ瞳で優一を見る。

その目はまるで、子供の成長を見守る母親のような目だった。


日記

あの後、綿雨さんがクッキーを焼いてくれた。

紳士な対応のお礼だろうか?

でも、まさか綿雨さんがあんな下着を身につけていたなんて……。

彼氏でもいるのだろうか?


P.S.

初めて触った女性用下着は、なかなかに触り心地がよかった。

卑しい話だが、なかなかに高そうだ。

あんな触り心地のいい生地をTシャツに使ったら、着心地が良さそうだな、と思った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る