矢山行人 十五歳 夏13

 陽子のお願いは以下のようなことだった。


 妹、朝子が本当に山に行っているのだとして、そこで彼女は何をしているのか? 本当に神様を探しているのか、それを突き止めて欲しい。


 話を聞いて浮かんだ疑問を口にした。

「陽子が自分で行くのじゃダメなの?」


 少し躊躇った仕草の後に陽子が言った。

「ぼくじゃあ駄目なんだ」


 何か理由があるのだろうけれど、詳しく語るつもりはないようだった。

 仕方なく僕は次の疑問を口にした。


「ただの同級生の僕よりも大人に頼むほうが確実じゃない?」


「大人は何か起こるまでは静観する姿勢なんだ。もちろん、朝子が抜け出す度に叱ってはいるようなんだけど、あまり効果は望めていないんだ」


 陽子の話が本当だとする。病名の分からない病気を患った朝子の気持ちに立ってみると、不安から自分勝手な行動にでるのも納得はできる。

 陽子のしようとしていることは、もしかすると朝子と大人の関係において余計、と言えるかも知れない。

 けれど、部外者である僕がその部分に口だしをするつもりはなかった。


「ちなみに僕に門限があるかも、とかは考えなかったの?」


「行人くんは一昨日、ぼくの家に泊っただろう? 門限があるにしても、それほど苦労もなく親を誤魔化すことはできるんじゃないかい?」

 陽子がにっと笑った。


 なるほど。


 何はともあれ、僕は陽子に夏休みの宿題を手伝ってもらった。

 キャッチボールで言うところのボールを投げて受け取ってもらったのだ。そのボールをまた投げて返してくるのだから、可能な限り受け取ろうと思う。

 僕が投げたものよりも球威が速く、角度が急であったとしても空中にボールが飛行する限りは文句を言わず、足とグローブを動かす。

 ボールが地面に落ちてから、文句なり言い訳なりをすることにして、そして、グローブにボールが収まったら、また投げ返そう。


 ん? 

 ということは、次は僕がお願いする番なのか。

 まぁ、お願いは決まっているか、セックスをさせて下さい、だな。


 もう、あんな惨めな夢精はごめんだ。


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