矢山行人 十五歳 夏11

 部屋に戻って、テレビ画面を点けてその前に座り、プレイステーション2にAVを入れて、オナニーをしようと思った時、隣の部屋から怒鳴り声が聞こえた。

 それが兄の声だとすぐに分かった。兄は誰かと電話で話をしているようだった。


 こんな夜更けになんだろう?

 と思い、ヘッドフォンを外した。兄の怒鳴り声や憤りの声を聞いていると、どうやら彼女に別れ話を切り出されているようだった。

 昨日、美紀さんと話をしたことを思い出す。


 ――もう少し、成長したら、私のことも相手にしてね。


 余裕たっぷりにそんなことを言う美紀さんを兄がどうこうできるとは思えなかった。別れ話は当然というか、ちゃんと電話でも別れ話をしてくれているだけ、マシというものだろう。

 そういえば僕は美紀さんとそういうことをするのを想像できるだろうか? 出来ると思う。

 秋穂でなければ誰でも良い訳だから当然、美紀さんであっても良い。

 ただ、できればしたくない気持ちが僕の中に沸きあがってきた。


 ふむ、僕にも人間的理性はあるようだ。

 プレステーション2のコントローラーを操作し、ヘッドフォンをつけ、横に箱ティッシュを置いた。

 しかし、途中で聞こえる兄の声に萎えて、僕はプレイステーション2の電源を落とした。下ろしていたパンツもジャージも履きなおして、ベッドに潜ってそのまま眠った。

 夢を見た。

 僕は教室で授業を受けていて、クラスメイト全員が席についていて、そこには不登校になっているミヤの姿もあった。教科書に目を向けると、何故かそれがエロ本だった。ふと周囲を見渡しても、皆エロ本を教科書にしている。

 何の授業なんだろう?

 と思いながら、エロ本を見ると、良い感じにエロい。年上の女性が半裸で、ポーズを決めている。

 おぉ良い感じ。で、射精。


 いやいや。

 有り得ねぇだろ、と夢の中で呟いた。

 現実に起きて布団をめくってみると、しっかり夢精をしていて、死にたくなる。童貞の妄想力って、こんなに非力なの?


 ちゃんとセックスをすれば、夢のクオリティは上がるのだろうか?

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