第11話 関係性が論理を上昇させる

 即今縁で結ばれた二つの点は「ただ二つの点が関係性を持っている」というだけでは表現できない全く新しい挙動をとります。

 例えば水素原子と酸素原子が結合して水になると水素の挙動とも酸素の挙動ともどちらとも似ても似つかない水独特の挙動が生まれます。文字盤や針や歯車などが関係を結ぶと腕時計の腕時計としての挙動が生まれます。もともとあった素材の性質とは無関係に全く新しい一つの個体として独自の挙動をとるのです。あたかも不可分な一つの個体のように振る舞うことから縁観論ではここに実体の中心があると考えます。それが論理集約点【ろんりしゅうやくてん】です。論理集約点とは即今縁が集約している場所にある関係性の世界での概念上の点です。

 ザイルロープで結ばれた二人のクライマーは一つの生き物のように振る舞います。まるで一人の人間の右足と左足のように運命を共にするのです。「右足が滑ったが左足が持ちこたえたので二人とも助かった」「右足が滑って左足が持ちこたえられなかったので二人とも落ちた」ロープで結ばれた二人の人間はまるで一人の人間のようです。

 論理集約点とはこの二人のクライマーを運命共同体と考えたときに表れる新しい点のことです。

 関係性が結ばれるとそこには新しい実体が生まれます。縁観論によればその挙動は素材となる点よりも相対的に論理性が高い傾向にあります。関係性は論理性を上昇させるのです。そこで縁観論ではこの新しい点を「論理集約点」と呼んでいます。

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