第6話 化学反応を起こすものに実体はない

 時計や車のように何かを組み合わせただけのものには実体がありません。では部品の素材となる単体の金属などはどうでしょうか。単体の金属は物質と呼ぶ事ができるでしょうか。金属に実体はあるのでしょうか。

 鉄は空中に晒しておくと酸化してしまいます。ナトリウムも金属ですが水と接しただけで激しく反応を起こします。鉄は鉄でなくなり酸化鉄となりナトリウムはナトリウムでなくなり水酸化ナトリウムとなります。環境に放っておくだけで金属は自ら関係を結び直して別の物質になってしまうのです。

 例えるなら金属とは全員ギターしか出来ないロックバンドです。ギターだけではロックバンドとして魅力がありません。もしドラムやベースやキーボード等のメンバーが見つかればバンドは解散してそれぞれ別のバンドで活躍することになります。

 つまり単体の金属とはただおなじものが仕方なしに集まっていただけなのです。そこには集まっていると言う関係性だけしかありません。単体の金属に実体はないのです。

 金属以外の物質も同じです。化学反応を起こすということは関係を結び直すことです。関係を結び直す事ができるのですからもとから不可分の物質があったのではありません。もともと関係性しかなかったのです。ですから化学反応を起こす全ての物質には実体がないのです。

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