第5話 分解できるものに実体はない

 生命には実体がなくそこには関係性だけしかありません。では生命以外のものはどうでしょうか。例えば「腕時計」は物質と呼ぶ事ができるでしょうか。腕時計という実体があるかどうかです。

 腕時計は代謝を行いません。ですから安定的にそこに存在し一定の質量と体積を持った物質として実体があるように思えます。ところが腕時計を分解して部品にしてしまうとどうでしょうか。分解すると腕時計はどこかへ消えてしまうのです。そこにあるのは文字盤や針や歯車やバネ棒と呼ばれるものであり「腕時計」と呼べるものはどこにもありません。分解してしまうと腕時計はなくなってしまうのです。

 つまり腕時計という実体はないのです。そこには部品が腕時計を構成するという関係性だけがあります。

 電車や車や家や洋服も眼鏡もすべて分解できます。分解できるものには実体がないのです。我々が普段の生活で身の回りにある物質だと思っているもののほとんどは分解できます。従って我々の身の回りにある大部分のものは実は物質としての実体のないものだということになります。あるのは腕時計や電車や家を作るために部品が集まるという関係性だけなのです。

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