第3話 僕は認めないぞ!住所特定やパスワード解析はハッキングじゃないし!こんなの!ハッカーじゃない!!!



司会「はい!終了!そこまで!」



司会「結果は、3位、3番 マスコミからも注目されているホワイトハッカー 天楽 楽太郎選手 2つの脆弱性」



楽太郎「くそ!住所特定野郎に気を取られた!!」


桐谷タクヤ「プ( ´,_ゝ`)プッ・・なにが天才ホワイトハッカーだよ!1位とれてねぇじゃん!」


楽太郎「脆弱性を一つも見つけられなかった。お前が言うなよ!」


桐谷タクヤ「だって!おれ天才ハッカーなんて一言も言ってないもーん!でも誰かさんは、天才ハッカーなのに3位とかwww」


桐谷タクヤ「大事なことだからもう一度言うね!3位!」


楽太郎「くぅぅぅぅ!!!!」



司会「 2位 8番 中国からの女子留学生 オウ・ジ・ハン選手 4つの脆弱性」


オウジハン「チッ・・」


桐谷タクヤ「この子、化粧すればカワイイかも・・なんで留学生って化粧しない子ばっかなんだろうな・・」



司会「そして、ダントツ1位は・・・」



司会「10番、足立利虎選手 住所特定11件 パスワード解析18件 合計 29件の人の脆弱性を見つけ優勝です!」


司会「はい!優勝賞品の図書券3万円分ですよ」


リコ「ありがとうございます!やった!これで、お高いIT専門書が買えるぞ!」



楽「こんなのインチキだ!僕は認めないぞ!プログラムの脆弱性をついてないから、ハッキングじゃないじゃないか!!!」


席を立ちリコに詰め寄る楽太郎


楽「リコ君!君はエセハッカーだ!僕は認めないぞ!」


楽「ハッカーちゅうもんはね!プログラムの脆弱性を見つけてナンボなんだよ!!!」


もう抗議する楽太郎を見かねた


審判をしていた老教授が口を開いた


審判「そうかのぅ・・・歴代ハッカーランキングで今も1位2位を争う伝説のハッカー、ケビン・ミトニックはプログラムの脆弱性よりも」


審判「人の脆弱性を突いたソーシャルエンジニアリングを使用したソーシャルハッカーじゃ!プログラムの脆弱性を突くだけがハッカーの全てではないんじゃよ」


楽「で、でも!」



審判「これは、時代の流れなんじゃよ」


審判「SNSの普及で、だれもがネットで気軽に自己発信をできる時代になった副作用なんじゃ」


審判「今では、なんでもかんでもネットに報告する時代。美人の女性がトイレに行ったこともSNSで報告し、


大企業の経営者が蚊に刺されたことまでSNSに報告する時代になったんじゃ」


審判「蚊に刺されたことやトイレに行ったことも報告するなら、当然、住所を特定できる情報やパスワードの解析に結び付く情報も知らず知らずにSNSで報告してしまっているんじゃ」


リコ「僕は、それを報告癖と呼んでいます。SNSに報告が多い人は特定しやすいですよ・・」


桐谷タクヤ「しつもーん!報告癖って、具体的に、どういう書き込み?」


リコ「今、トイレに行った。今日、近所の〇×店で飯食べた。今日雪降った。窓の外の様子はこんな風で画像投稿。最寄りの〇×駅で人身事故マジ最悪。今日は息子の〇×小学校の運動会」


桐谷タクヤ「あぁ。なるほど・・確かに、そういう報告の書き込みを集めていけば色々わかりそうだね」





審判「そのとおりなんじゃよ!報告癖は人の脆弱性なんじゃよ。昔はホームページを作るのも大変だった・・・だから簡単にネットで報告できなかった」



審判「ホームページ開設は月額有料サービスでHTML言語を覚えないと発信できなかった。画像をHPに上げるのも一苦労」


審判「1枚の画像をネットにアップロードするのに数分かかった。」


審判「それが、今や、どうじゃ?TWITTERもブログもHPも全部タダで、文字を入力したらボタン押すだけ!プログラミングがわからなくても自分の文章を手軽にネット発信できる」


審判「デジカメからメモリースティックを取り出しPCのメモリースティックカードリーダーに挿すなんて手間はないんじゃ」


審判「スマホのカメラでパシャでポンじゃ!」


桐谷タクヤ「メモリースティックって何?」


オウジハン「カードリーダー??」


審判「おやおや~今の若モンは、メモリースティック知らんのか。わしも年をとったのぅ。ジェネレーションギャップを感じるわい」



リコ「ソニーが昔、販売していたSDメモリーカードみたいなもんですよ」



桐谷タクヤ「なんだ。規格争いで負けたヤツか。じゃカードリーダーって?」


審判「昔はのう。デジカメとPCをつなぐケーブルが5000円くらいしたんじゃ」


桐谷タクヤ「えええ!ケーブルが5千円!!」


審判「そうじゃよ・・・だから、大抵の人は1000円くらいのカードリーダーを買ってたんじゃ」



桐谷タクヤ「それマ??イチイチ。デジカメからSDカードみたいなもんを取り出して、カードリーダーをPCに挿してって、うわっぁぁ!めんどくせぇ・・」


審判「そうじゃよ!昔は面倒な作業がいっぱいあったんじゃ!だから昔は簡単にネットに報告できなかった。」


審判「ネットの日記から住所やパスワードを特定されるなんてことは、ほとんどなかったんじゃよ・・」


審判「さらにアメリカでは住所や電話番号は不動産サイトで公表されておるし、電子政府化されているので、おおよその住所と名前がわかれば」


審判「電話番号も住所も納税額までわかるんじゃよ」


審判「なんでもかんでもネット化してきたゆえ、それだけリコーンは今や重要なハッキングのスタイルじゃ」


リコ「すいません。リコーンってなんですか?」


審判「お主、自分の使っているスキルがリコーンの一種だとわからんで、使ってるのか?」


リコ「はい。」


審判「リコーンというのはハッカーのポジションみたいなもんじゃ。サッカーでミッドフィルダーやフォワードがあるように」


審判「ハッカーも人それぞれ、役割もあるんじゃ。システムのバグを狙うバグハンター、インフラを狙うインフラハッカー、マルウェアの作成が得意なウイルス屋、フィッシングが得意なフィッシャー」


審判「人を騙すことに長けたソーシャルハッカー。フェイクニュースを流したり掲示板を荒らしたり、サービス障害を起こすトロール」


審判「そして、リコーンはWEBに公開されている様々な情報から、どこが攻撃しやすいか、だれがなりすまししやすいか、だれが騙されやすいか。偵察をする役割」


審判「アメリカのサイバー犯罪の10パーセントを占めていて、不正アクセスをしないので実態はよくわかってないのじゃが、」



審判「優れたハッカー集団には優れたリコーンがいて、どこが攻撃しやすいか、だれがなりすまししやすいか、だれが騙されやすいかリコーンが見つけているんじゃよ」


審判「そういった情報はどこから集めているかというと大体SNSじゃ。アメリカだと求人サイトなんかもおおいぞい」


リコ「求人サイトですか?」


審判「そうじゃ。アメリカは求人サイトに登録してスカウトしてもらうサービスがあるからのぅ!そういうところからリコーンは役職を調べて、成り済ますんじゃ」



リコ「僕はリコーン・・・か・・・ヘヘッ」



貧しく家族もいないリコにとって、夢だったホワイトハッカーになるには金も不足し、子供の頃からプログラミング教室にも通えず


天才的なITスキルもないリコにとって


ホワイトハッカーになるのは絶望的に思えていた


しかし、SNSからパスワードを解析したり、住所を特定するなどの行為はトップクラスのハッカーもしていること


リコーンと海外で言われていることに


リコは自分でも頑張ればトップクラスは難しくてもハッカーになれるのでは、と、ささやかな希望を持ち始めていた・・





楽太郎「ちっがう!!違うよ!そんなのハッカーじゃない!求人サイトを見たり、SNSを見て住所特定なんて・・・そんなの邪道だね!システムの脆弱性を見つけなきゃダメなんだよ!!!」


審判「そうかのぉ。先日起きた。高校生が学校の成績表を改ざんした事件はどうじゃ?フィッシングで偽サイトに誘導し教師にIDとパスワードを入力させたんじゃ」


審判「その教師のIDとパスワードを使用し成績表を改ざんしたんじゃ」


審判「その事件は、一切、システムのバグも突かなかったしウイルスも使われなかったんじゃ」


審判「人をだまして人の脆弱性をついただけじゃ」



楽「でも、でもぉ!!」





審判「お主も、わからんやつじゃな・・」


審判「じゃ、ハリウッドセレブの自撮りヌードがICLOUDから大量に流出した事件はどうじゃ?ICLOUDシステムのバグなど、ついてないしコンピューターウイルスも一切使われていない」


審判「使われたのは、ロシア製のパスワード生成ツールと類推じゃった。」


審判「女優の飼っている犬の名前と誕生日を組み合わせれば、それがパスワードだったんじゃよ」


審判「それで、ハリウッドセレブの自撮りヌードや自撮りセックス動画が出回り、世の男性は大興奮じゃ!はぁん?」


審判「どうじゃ?本当にハッキング=プログラムの脆弱性を突く?ことだけ・・なのかのぉ・・」


楽「僕は認めないぞ!絶対認めないぞ!こんなの認めない!」



楽太郎「ハッカーちゅうもんはね!ハッカーちゅうもんはね!!!」






リコ「あっ!楽太郎さんって、藤沢のリバーサイドのアパートに住んでるんですね。花火がきれいだなー」


楽太郎「な、なぜ・・それを・・」


リコ「だって、楽太郎さんのSNSに僕の作ったツールを使用したらベランダから撮影した写真を見つけて特定しちゃいました」


リコ「これ、楽太郎さんが撮影したんですよね」


楽太郎「(し、しまった。ベランダから花火を撮影した写真から住所特定された!?あの時か・・・)」


回想


楽太郎「さぁ!引っ越しも終わったし、今日から大学生活だ。」


楽「ふんふん♪」


鏡を見る楽太郎


楽「いっそ!髪の毛でも染めて大学デビューとかしちゃうおっかな♪」


楽「いや~こまっちゃうな!ボキュが髪の毛を染めたらもっとイケメンになって彼女とかすぐできんだろ!5人不倫も夢じゃない!」



楽「ブハハハ!最近はテレビでも天才ホワイトハッカーとチヤホヤされてるしな!ブハブハ!ブハハハ!」


パンパン


その時である。花火が打ち上げられた。


楽「おっ!花火か!ボキュの大学入学を祝福してるのかな?どれどれ~ベランダベランダ♪」



楽「ああいいじゃんいいじゃん!眺めもいいじゃん!スマホに撮ってSNSに投稿しちゃおう!最近ネタに困ってたんだよな」


楽「ハイ!パシャ~」



回想終わり


楽太郎「あ、あの時のか・・・」





会場の人A「えーっうそぉSNSから住所特定されるなんてありえないよね~」


会場の人B「プッ!しかも天才ホワイトハッカーを名乗ってるやつがだぜ!ださっ!」


学生C「楽太郎さんってSNSから住所特定される・・・そういう人だったんだ・・・」


楽太郎「そういう人って、どういう人だよ!ハッキリ言えよ!!うわぁぁん!」


会場ひそひそ


楽太郎「そ、それは!ボクやない!!!天才ホワイトハッカーとマスコミが!マスコミが!賞賛する。この僕がそんなSNSで住所特定されるなんて!!!」


リコ「へっ?」


楽太郎「双子の弟の仕業です( ー`дー´)キリッ」


会場「・・・」ヒソヒソ


学生「あれ?でも、楽太郎さんテレビの取材を受けていた時の部屋の映像が同じですよね」


楽太郎「うわぁぁぁ!!」


学生を殴る楽太郎


学生「ひぶし・・」


気絶する学生


楽太郎「こいつが原因だ!こいつが、僕のSNSにいたずらしたんだ!僕は住所特定なんかされてないぞ!ゼッタイ!されてないんだからね!」


リコ「は、はぁ・・でも、SNSにいたずらされてしまう人が天才ホワイトハッカーなんですか?」


桐谷タクヤ「プッ。それな!」


楽太郎「ちがーぅぅ!!ばかだな・・・僕みたいなホワイトハックで忙しい!!!この僕が!SNSを自分で更新してやっているわけないだろ!」


楽「僕はなんたって人気者で金持ちだからね!こいつに僕のSNSを管理させてたんだよ!あはは!あはっは・・」


リコ「そう・・だったんですか??」


桐谷タクヤ「もう、そういうことにしといてやれよ。かわいそうだよ・・」ヒソヒソ


楽太郎「SNSから住所が特定される奴がハッカーにいるなんて!いやだ!こんなハッカーはヤダ!!!!いやだ!こんなホワイトハッカーがいるんなんていやだ!」


殴って気絶した学生を抱え、会場を後にする楽太郎


学生A「行っちゃったよ・・なんだったんだ」


リコ「さぁ」


桐谷タクヤ「なんにしても君!凄いね!俺は桐谷卓也!よろしく!」


リコ「僕はアダチリコです!よろしく!」





リコはハッキングコンテストで一目を置かれ、友達もでき大学生活は順調にスタートしたかのように見えた



審判「(ふぅむ。しかし、危険じゃのぅ。リコーンはブラック・ハッカーの側のスキル。なぜ・・あの子がそんな技術を身に着けてしまったのか・・・)」



審判「(気になるのぉ・・)」



桐谷タクヤ「リコ知ってる?タクヤって名前はイケメンぽっそうな名前ランキング1位なんだよ」


リコ「へぇ・・そ、そうなんですか・・・」


桐谷卓也「べ、べつに俺がイケメンって言いたいわけでは決してないよ。全然言いたいんじゃないんだよ!でも、みんなが言うから!みんなが!言ってくるから・・・」


談笑して笑うリコ「あはは」





この先リコのリコーンのスキルがリコの人生を、荒波に巻き込んでいくということは、



この時点でリコは想像すらしていなかった・・・



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