第4話 @mercuyneet-①-

ゲレンデを滑り落ちて数時間。誰もいないゲレンデの端の方で一息をつく。全くゲレンデの反射光が俺を照らし上げてますますカッコいい俺を照らし上げて、ハードボイルドに磨きをかけてくれるぜ。しばらく寝るんじゃないの漁ってみたが明晰夢コヤンの姿も瑠奈の姿も、ましてや黒ウェアの集団もほとんどいなくなっていたもしかしたらもうここから消えちまったのかもしれねえ。一手、遅かったか。敵の作戦に溺れ、動くのが遅れた数時間前の俺をハードボイルドに殴りたい。

こうなりゃあのダンディ野郎が言っていた『あそこ』って所に向かってみるべきだろうな。

ダンディマンの言っていた場所は何処か。ハードボイルドな脳みそをフル回転して考える。

キーワードは3つ。

明晰夢コヤン、瑠奈、ダンディズム……

俺の脳内に電流が走った。

そこからの俺の行動は早い。すぐさまゲレンデを出る準備を……が、その前に。

「隠れてるのバレバレなんだよ。大人しく出て来な」

ザッ、ザッ、ザッ。近くの木陰や雪の中から現れるのは例の黒ウェア集団。

数は4人必要にも俺を囲んできやがった。ったく、ハードボイルドじゃねえな。タバコをくわえ、一吸い。

ナイフが2人、チャカが2人。

少々面倒だが奴らは「能力」持ちの雰囲気ではない。

「全員まとめて来い。すぐかたしてやるよ」

その言葉を口火に、奴らは一斉に襲いかかって来た。

ザことを1,000のナイフの2人はさておきチャカ持ちはちと面倒くさい。発泡音が鳴り響いた瞬間、俺はくわえていたタバコを宙に放り投げ、異能クロッシングタイムを発動した。


瞬間形成されるスーツのような強化外骨格。それにより音よりも素早く動き、弾丸など掻い潜り、ナイフに一撃。腹に二撃。チャカに三撃。これをもう一度。

おっと、野ウサギちゃんに当たるといけねえ。弾丸も握り潰しておかないとな。

最後に俺は、投げたタバコをキャッチ。異能タイムは終わりだ。

「ん、これは?」

のびた黒服の背広から何が落ちた。これは……半永久追跡モバイル《SAD2995》だ。相手を認証させればその人物を死ぬまで追う悪趣味なS&S社(サーチング&ストーキングカンパニー)のブツ。しかも特注モデルときやがる。レーダーに写っているのは俺と、遠くの俺の予想した場所にもう一つ。

十九八九ダンディ英国紳士だな。いい拾い物をした。俺のハードボイルドな脳細胞はやはり正解しか叩き出さない。

俺は自分の追跡の回線のコードを引っこ抜いた。さて、そろそろ待ち合わせの場所に行くとするか。

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