7-2 おち〇ちんのついてる女の子、それが理想の男の娘
*
イストヴィア城の応接室へと案内された照。
そこにはアインノールドから一緒にやってきた五人の他に、先ほど会ったヒミコ姫、そしてまだ照の知らない人間が二人いた。
一人は金髪碧眼の美少年。
もう一人はエルフの幼女。
「おお、惣真殿! ……いや、照殿ではござらんか!」
そう声をかけてきたのは、初対面のはずの二人のうちの、金髪碧眼の美少年の方だ。
「……へ? いや、えっと……誰?」
「むむむ、照殿も拙者の事が分からないでござるか。姿が変わったから仕方ないとはいえ、少し悲しくなるでござる」
「ボクの事を知ってるってことは、同じ来訪者だよね……それでその口調……」
ムムム……と考え込んだ後、閃いた様子でポンと手をたたく照。
「もしかして鏑木昴? ……って、そんなワケないか、アハハハハ」
「アハハーじゃないでござる! 拙者、正真正銘の鏑木昴でござるよ!」
「えぇえっ! ウソ? だって……」
照は異世界転移の前の鏑木昴を思い出す。
テカテカした黒髪センター分けに、小太り瓶底メガネのオールドオタクスタイル。
それが照の知る鏑木昴という男だったはずだ。
「……それがどうして王子様系イケメンに変身を?」
「フフン、それが異世界転移というものでござるよ」
「マ、マジか……ここまで跡形もなく変わっちゃうのか……」
「ともかく、拙者のすぐ後に転移してきた陽莉殿に続いて、照殿にまで会えたのは嬉しいでござる。クラスで拙者に優しく接してくれたのは、照殿と陽莉殿のお二人だけでござったからして」
「優しく……ってか、普通にしてただけだと思うけど……」
特に優しくした覚えのない照は首をひねった。
だがたしかに、クラスの女子からは「キモイ!」だの「ウザい!」だの「変態!」だのと言われ、嫌われていたのを思い出す。
(それに比べれば、確かに優しかったかな?)
などと納得している照へ、調子に乗った昴が上から目線で迫ってくる。
「うむ、照殿なら合格でござる。これから拙者の作るチーレムに入れてあげてもいいでござるよ」
「って、いらないよ! 余計なお世話だ!」
そんな態度だから嫌われてたんだろ! と言う言葉はさすがに飲み込んだ照。
かわりにチーレムという言葉に反応する。
「……というか、昴もやっぱり異世界転移するとチーレムを目指してるの? まぁそうだよね、その気持ちはわかるよ、昴」
かつて夢見たチーレムを昴も目指していると知って同調する照。
「当然でござる! 異世界でチーレムは男の夢でござるよ!」
「うんうん、まぁ頑張ってね。あーでも、言っとくけどボクはダメだよ、異世界転移で男になったから」
「――っな! 男ですと?」
「そうそう。だからもう二度とチーレムに誘わないでね。……って」
急にフリーズした昴に、思わず尋ねる照。
「ど、どうしたの、突然?」
「お……」
「お?」
「男の娘キタァ――――ッ!」
突然テンションを上げる昴に、照は思わず「ひっ!」と悲鳴を上げた。
そして昴のフェチズムが爆発する。
「男の娘は女装した男の事なんかじゃない!
おち〇ちんのついてる女の子、それが理想の男の娘でござる!
そんな二次元にしかいない存在が、今拙者の目の前に!
うぉおっ、ただの美少女より点数高いでござるよ!
照殿、ぜひ拙者のハーレムにぃっ!」
「ひぃいっ! 男って言ったのに、どうして逆効果になるの? 怖い! 怖いよぉ!」
昴のまさかの男の娘フェチに戦々恐々とする照。
さらにそこへ――
「おい昴! やめないか! 照が嫌がっているだろ!」
「ぐぬぬ、朝弥殿、邪魔をするというなら、たとえお主でも許さんでござる!」
朝弥が加わり、照を賭けた睨み合いへ。
その様子に照が頭を抱える。
(だから違うんだ、ハーレムってこうじゃないんだよ神様……)
*
続いて照は、もう一人の初対面の人物に目を向ける。
銀髪で耳の尖った幼女――。
(この子の耳……あの宿屋の冒険者と同じエルフだよね)
そう思ってみていると、目の合った幼女がニッコリと笑いかけてくる。
「こんにちは! リッカちゃんだよ!」
「――はぅっ! か、かわいい……」
きらきらとエフェクトがかかったようなあどけない笑顔に、思わずニヤけてしまう照。
だが……照は考え直す。
(でも……この場にいるって事は、この子も来訪者なのかな?)
(昴みたいに見た目がすっかり変わっちゃったパターン?)
(だとしたら幼女っぽく振舞ってるけど、中身は……)
そんなことを想像して、照はブルッと身を震わせた。
そして近くにいた昴に尋ねてみる。
「ね、ねぇ、この子って……?」
「ああ、リッカちゃんでござるか? どうやら拙者より早くやってきた来訪者らしいでござるが、自分の事を話さないので正体不明の幼女でござるよ」
「正体不明……だったら……」
照はこっそりと[探偵の鑑定眼]を使ってみる。
――――――――――――――――――――
名前:淡谷 六花(あわや りっか)
性別:女 年齢:42 種族:エルフ族
状態:なし
ジョブ:[聖女]
――――――――――――――――――――
【称号】
[異世界からの来訪者][森の守り人]
――――――――――――――――――――
【ジョブスキル】
[回復魔法レベル3][神聖魔法レベル3]
――――――――――――――――――――
【ステータス】
レベル:6
HP:54/54 MP:92/92
攻撃力:14 防御力:21 魔法力:81
俊敏力:53 幸運値:21
――――――――――――――――――――
【アクティブスキル】
[ヒールライト][ターンアンデット][アンチドーテ][ホーリーエンチャント]
――――――――――――――――――――
【パッシブスキル】
[経験値×10倍][俊敏+25P][魔法力+25P][魔力消費3/4]
――――――――――――――――――――
鑑定結果をみた照は考えを巡らせる。
(名前は……淡谷六花か。
じゃあ本人の言ってる『リッカちゃん』は本名なんだ……。
だけど、うーん……。
淡谷六花、聞き覚えのない名前だなぁ。
少なくともうちのクラスにはいなかったはずだよね……)
そう思いつくと、照は同じ応接室にいた乃愛の傍へ寄っていく。
「あの、乃愛先輩。たしかウチの高校の全校生徒の名前を覚えてるって言ってましたよね?」
「ええ、覚えてるわ。それがどうしたの?」
「なら、淡谷六花という名前に心当たりは?」
「アワヤリッカ? ……知らないわね。ウチの生徒はおろか、教職員にもそんな名前の人物はいないはずよ」
「そうですか……」
乃愛の答えを聞いて、再び悩み始める照。
(学校の関係者じゃない……ってどういう事なんだろ?
今回の異世界転移は、あの爆弾事件に巻き込まれた人だったはずなんだけど……。
燐子さんは刑事で部外者だったけど、他にも居たってことかな?)
答えを探して照は再度鑑定結果を見る。
(名前以外のデータだと……年齢は42?
エルフだから見た目と年齢が違うのか?)
そう考えた照だったが、慌ててそれを否定する。
(……って待って待って! そうじゃない!
だって燐子さんは、見た目が十代まで若返ってたけど、ステータスの年齢は35歳のままだったじゃないか!
いくら外見が変わっても、ステータスの年齢は変わらない……。
つまりこれが彼女の実年齢だとすると……)
深く考え込む照。そして……。
(――ああっ! 一人いる!
条件に当てはまる人物が一人だけ!
でも……そんな……そんな恐ろしい事が……)
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