3-3 ダメだっつってんだろ、分かれよ
3
やってきたのは城の一角にある教会のような場所。
奥には儀式の間という部屋があり、そこに順番に入っていき、それぞれが成人の儀を受ける事になっている。
「うっひょーっ! [勇者]でござる! [勇者]といえば間違いなく主人公が授かるジョブ! チートきたー!」
ステータスを見ながら騒ぐ昴。
最初に儀式に挑んだ昴は、一番欲しかったジョブを引き当てたようだ。
「ほら櫻井……じゃなくて朝弥殿! 見るでござる、拙者のジョブを!」
浮かれ切った様子で、昴が朝弥にステータスを見せてくる。
――――――――――――――――――――
名前:鏑木 昴(かぶらぎ すばる)
性別:男 年齢:16 種族:人間
状態:なし
ジョブ:[勇者]
――――――――――――――――――――
【称号】
[異世界からの来訪者]
――――――――――――――――――――
【ジョブスキル】
[聖剣スキルレベル1][精霊魔法レベル1]
――――――――――――――――――――
【ステータス】
レベル:1
HP:15/15 MP:12/12
攻撃力:10 防御力:8 魔法力:9
俊敏力:5 幸運値:5
――――――――――――――――――――
【アクティブスキル】
[セントスラッシュ]new
[ヴェント]new
――――――――――――――――――――
【パッシブスキル】
[経験値×10倍]
――――――――――――――――――――
【取得スキル解説】
・
・
・
「昴くん、[勇者]とはレアなジョブを引き当てたわね」
一緒にステータスを覗きながら清霞が評する。
「ステータスの初期値がちょっと低い気がするけど……まぁレベルが上がれば初期値なんて気にしなくて大丈夫、頑張ってレベルをあげなさい」
「任せるでござる! このままチートで俺Tueeしてハーレム三昧してやるでござるよー!」
清霞にちょっぴりディスられた事にも気づかず、テンションの高いままの昴。
「そういや清霞さんはどんなジョブなんですか?」
朝弥がふと疑問に思ったことを口にすると、清霞はいとも簡単にステータスを見せてくれた。
――――――――――――――――――――
名前:夕霧 清霞(ゆうぎり さやか)
性別:女 年齢:24 種族:人間
状態:なし
ジョブ:[賢者][大地魔術師]
――――――――――――――――――――
【称号】
[異世界からの来訪者][S級冒険者][宮廷魔術師][イストヴィア魔法私兵団団長][魔術を極めし者][おっさんラブ]
――――――――――――――――――――
【ジョブスキル】
[精霊魔法レベルMax][古代魔法レベルMax][土魔法レベル8][ゴーレム魔法レベル8]
――――――――――――――――――――
【ステータス】
レベル:46
HP:401/401 MP:553/553
攻撃力:51 防御力:96 魔法力:416
俊敏力:148 幸運値:102
――――――――――――――――――――
【アクティブスキル】
【精霊魔法】
[ヴェント][リヒト][アクウァ][アルボル][イグニス][シャドゥ][フロスト][プアゾン][グロム][クロノス]
【古代魔法】
[ルーンエイワズ][ルーンナウシズ][ムスペルヘイム][ルーンベルカナ][ニヴルヘイム][マーチオブワルキューレ][トールハンマー][ユグドラシル][ラグナロク]
【土魔法】
[ストーンボルト][アースウォール][アースエンチャント][ロックビート][アースクエイク]
【ゴーレム魔法】
[サンドマン][ストーンゴーレム][アイアンゴーレム][リペア][ガーゴイル]
――――――――――――――――――――
【パッシブスキル】
[経験値×10倍][HP最大値+100][MP最大値+175P][魔法力+50P][魅了耐性(小)][魔力消費1/2][無詠唱][マルチタスク]
――――――――――――――――――――
「ぬおおっ! な、なんでござるか、この拙者との圧倒的なステータス差は? ジョブが[賢者]? ぐぬぬ、[勇者]に匹敵するレア感が! それに強そうな魔法が山のようにあるでござる!」
気になった昴が清霞のステータスを覗き込み驚愕していた。
その横で朝弥が清霞に尋ねる。
「どうして清霞さんはジョブというのが複数あるんですか?」
「ジョブスキルのレベルが全てMaxになって、これ以上スキルが覚えられなくなったら、女神様から新しいジョブがもらえるのよ」
「ぬぉっ! では清霞殿、まだ拙者も別のジョブがもらえる可能性があるでござるか?」
「ええそうね。私の場合は[賢者」で覚える[精霊魔法]と[古代魔法]をカンストして、今は[大地魔術師]よ」
朝弥と昴の疑問に、丁寧に答えてくれる清霞。
「じゃあこの[おっさんラブ]っていう……」
「――それは聞かないで!」
……全ての質問に答えてくれるわけではないらしい。
ちなみに鑑定スキルがあればこう見えただろう。
――――――――――――――――――――
[おっさんラブ]
父親より年上の男性に惚れた経験のある女性に与えられる称号。
ファザコンとは違う、別のなにかだ。
取得スキル:魅了耐性(小)
――――――――――――――――――――
*
そうしているうちに、奥の祭壇の間からエルフの幼女――リッカちゃん――が出てきた。
彼女も成人の儀を行ったらしいが……幼女なのにいいのだろうか?
「リッカちゃん、何のジョブだった?」
「んーとね、ステータスには[聖女]って書いてあるのー」
優しく清霞が尋ねると、幼女は素直に答えた。
「[聖女]は回復術師の上級職ね。男性の場合は[聖人]になる、回復系魔法のエキスパートよ。いきなり上級職なんてすごいじゃない。」
「へぇ、すごいのか。ねぇリッカちゃん、キミのステータスっていうのも見せてよ」
「えー、ダメだよ朝弥お兄ちゃん。リッカ恥ずかしい」
「ダメなのか? 別に恥ずかしがる事じゃないだろう?」
「ダメだってば~。ダメダメ、だーめ」
「何で? いいじゃないか減る物じゃないし」
「だからダメだって~」
「少しくらい見せてくれたって……」
ホントの幼女と話してるような気分になった朝弥は、しつこくステータスを聞いてしまう。
すると――
「……うるさいな、ダメだっつってんだろ、分かれよ」
「あ、はい、スミマセンでした……」
――急な幼女の真顔に、思わず敬語で謝る朝弥だった。
*
水晶に触れた途端、朝弥の体を光が優しく包み込む。
それから30秒ほどして……パッとはじけるように消えた
昴とエルフの幼女が儀式を終え、次は朝弥の番だったのだが……。
「……これで儀式は終わりなのか?」
あっけない終わりに首をかしげる朝弥。
試しにステータスを開いてみる。
――――――――――――――――――――
名前:櫻井 朝弥(さくらい ともや)
性別:男 年齢:16 種族:人間
状態:なし
ジョブ:[侍]
――――――――――――――――――――
【称号】
[異世界からの来訪者]
――――――――――――――――――――
【ジョブスキル】
[剣術スキルレベル1][二刀流レベル1]
――――――――――――――――――――
【ステータス】
レベル:1
HP:30/35 MP:8/8
攻撃力:23 防御力:15 魔法力:5
俊敏力:10 幸運値:4
――――――――――――――――――――
【アクティブスキル】
[連撃]new
――――――――――――――――――――
【パッシブスキル】
[経験値×10倍]
[攻撃回数+1回]new
――――――――――――――――――――
【取得スキル解説】
[連撃]
剣術スキルレベル1で習得。
一度の攻撃で二連撃を放つ。
[攻撃回数+1回]
二刀流レベル1で習得。
通常攻撃が2回攻撃になる。
――――――――――――――――――――
儀式はちゃんと終えていたようで、ジョブの欄には[侍]という表示がされていた。
朝弥が儀式の間を出ると、さっそく清霞が尋ねてくる。
「どうだったかな、朝弥くん? ちゃんとジョブはもらえた?」
「儀式は無事終了したみたいです。ちゃんと[侍]ってジョブももらえましたし」
「[侍]かぁ。刀での戦いに特化したレア職ね。スポーツマンっぽいキミには合ってるんじゃないかな?」
「そうですね。オレ、死ぬ前は剣道部でしたし」
「ならピッタリね。女神様はちゃんと見てるのよ、きっと」
「ちゃんと……?」
そう言われて朝弥は、この世界に送られる前に会った、自称女神の少女を思い出す。
ロクな説明もされず、放り出すように朝弥を異世界に送った少女――。
(『ちゃんと』の意味が、日本と異世界じゃ違うんだな、きっと)
朝弥は自分に言い聞かせるようにウンウンと頷くのだった。
*
コンコン……とノックをする音。
もうすっかり日も暮れた頃、朝弥は再び幼馴染のいる部屋の前に立っていた。
「陽莉、あのあと成人の儀っていうのに行ってきたんだ。そこでジョブというのを授かってきた。ここはホントに昔やったゲームみたいな世界なんだな。明日は陽莉も一緒に行こうぜ。キミはこういうの好きだったろ? だから……」
朝弥が声をかけ続けるも、やはり中からの返事はない。
「……おやすみ、陽莉。また明日……」
朝弥はそっと去っていった。
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