第二章 一
あれからひとつきほど経過し、峯田とは一度も顔を合わせることはなかった。
彼の存在は時の流れと共に薄れていき、僕の日常は元のまま、目覚めの散歩からはじまる同じ日々を過ごしていた。
けれど、しばらくするとそれもやめてしまった。
何もかもがどうでもよくなり、僕は外に出ることをやめてしまった。
夏の茹だるような暑さの中、窓を閉めっぱなした空気の流れの無い部屋の中で、僕の肉体と魂はどんどんそのエネルギーを失っていった。
食欲もなくなり、この世界から自分の質量が失われていくのを感じながら、それでも僕は枯れた泉を満たそうと思わなかった。
眠るというよりはほとんど気絶するように、だんだん意識が失われて、夢が僕を誘った。
それは、幼少期の懐かしい夢だった。
懐かしい風の匂いや、流れる雲の様子を眺めている僕の夢だった。
知らない街にいる僕がみた、知っている景色の夢だった。
呼吸する透明な月 水 @la_nui_tomb
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