第一章 六
「おかえり、今日は遅かったね」
「…ただいま」
「あの峯田って人、君に興味があるみたいじゃん」
「…変な人だったよ。正直もう会いたくない。君もよく知ってのとおり僕は面倒事が嫌いなんだ。」
「君は…君はいつもそうやってすぐ人から逃げようとする。悪い癖だよ。」
いつものように散歩から帰ると、ソファーに横になり目を瞑る。
すると幼い自分が現れ、僕に語りかけてくるのだった。
彼は僕の心の中の空間で、今も生き続けていた。
その少年は、多くの子供のように生命と自信に満ち溢れていた。
そして、きっといつか、七階のこの部屋のバルコニーから見える、青すぎるあの空に羽ばたけると本気で信じていた幼い少年だった。
よく晴れた八月の空に描かれる雲のように真っ白な僕だった。
「人と関わるのは面倒なんだよ。一人のほうがずっと楽だ。」
「だけど君は心のどこかで寂しいと感じている自分に気づいてるんだろう。峯田に話しかけられたとき、君はいくらでも理由をつけてあの場から立ち去ることもできたはずだ。でも、そうしなかった。それは君が峯田という人間に対して、少なからず何か期待していたんじゃないのか?」
「期待?僕が?」
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