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帰り、二人は途中まで手を繋いで歩いた。
心底楽しいと言う様子で、キラキラと輝きながら、幸せをまき散らしながら。
また明日と言い合ってワクワクした気持ちを内に秘めて帰った。
穴の底へと降りる大事な縄梯子はその日の遊びが終わると良が持ち帰った。
そして次ぎの日も、また次ぎの日も、二人はその遊びに興じた。
「ねぇ、りょう君。私達の穴、随分深くなったわね」
「うん、そうだね。何だか土が随分固くなって来て、上手く掘れないよね」
良と瞳は、家から持ち出したおやつを食べながら一休みしていた。
ジュースの入った水筒まで持って来ていて、深く空いた穴と土の山さえ無ければピクニックでもしている様だった。
「ねぇ、この木、桜の木よ! 春になると花が沢山咲いて凄く綺麗なのよ!」
瞳は、目の前に有る大きな木を指差して言った。
葉も落ちて、何の木なのか良には分かっていなかったし、興味も無かったけれど、瞳に木の正体を教えられて、良は桜の木であるらしいそれを仰ぎ見た。
「大きな木だよね。桜だなんて、全然解らなかったよ」
「今は解らなくても春になれば解るわよ。ねぇ、りょう君、知ってる? 桜の木の下には人間の死体が埋まってるんだって」
瞳が良の耳に唇を近付けてこっそりと言う。
良も声を潜めて「本当に?」と瞳の顔を、目を見開いて見る。
「知らないわ。でも、誰かにそう聞いたのよ。誰だったか思い出せないけど、確かに聞いたの。桜の花は、その死体の血を吸って色付くんですって」
「ふうーん、じゃあ、世界中の全ての桜の木の下に死体が埋まっているって事?」
「それは違うんじゃあないかしら? だって、桜の花って種類によって色が違うでしょ? だから死体が埋められてるとしたら、限られた桜の木の下にだけ埋めてるんじゃない?」
瞳の台詞に、良は少し黙った後、桜の木をジッと見つめて言った。
「人の血を吸った桜の花ってどんな色をしているんだろうね?」
瞳は、良の問い掛けに「赤っぽい色じゃあない?」と答える。
「……じゃあ、この桜の花はどんな色をしてるの?」
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