008  無職になるという事は人生の墓場である②Ⅰ

 そして、一度病院で手当てしてもらった後、三人は近くの路地裏に身を潜めていた。

 怪我を負っていた少女は言った。

「助かりました。でも、あれはないよ。私を病院に連れて言ってくれてくれたのはありがたいけど、運転ぐらいは安全に走行してよ。こっちは大怪我を負っていたのよ。無事で済んだのは良かったけど……」

 と、平然に言い放った。

「それにしてもどうしたんだ? あの大砲やミサイルは大型ギルドの物だぞ。俺は関わりたくないから帰って二度寝でもしてくるわ」

 剣次けんじはそう言って、先に帰ろうとした。

「待って‼ なんで、帰ろうとしているの? 私は追い回されているのにかくまってもくれないの? それに私は彼らから絶対に逃げないといけない理由があるの。お願い、私を隣町にある家まで送ってくれない?」

 少女はそう言いながら銃口を剣次の頭に向けた。

「私の名前は真田有希さなだゆき。隣町の柴又しばまたに住んでいるわ」

 そう自分の名前を告げると、追いかけてきたギルドの連中に見つかった。

「あっ‼ 待てや‼ そこの泥棒猫‼」

 と、一人が大きな声で叫んだ。

 仕方なく二人は、そのギルド連中が見境なく追ってくるのを有希とともに一緒に逃げた。

「あいつらは確かムクロ団の連中か?」

「剣さん、ムクロ団って何なんですか?」

「奴らは私とパーティーを組んでいたんだけど、私がパーティーを抜けるって言ったらしつこく迫ってきたから逃げようとしたら、この有様。私のソロの経験でこんなに大きくなったことは初めてよ。運が悪かったわ」

 彼らから逃げながら有希は自分の上を語った。

 この五年間、今まで他のギルドとパーティーを組んだり、一人で生活をしてきて金も底についてきた生活を送ってきた。ムクロ団とは、何ヶ月か組んでいたギルドメンバーであり、汚れ仕事やモンスター狩りなどに毎日のように引っ張られ回されてきた。

 有希は、そこら辺の人間とは違い。戦闘経験が豊富であり、周りからはすごく頼りにされてきたのだ。

 しかし、ここ最近は悪い噂などが流れ始め、家にもいられなくなり始め、その日常が嫌になり、もう一度自分を磨きなおしたいと、ムクロ団との縁を切ろうと逃げ、今現在に至るのだった。

 そして、剣次は事情を聞いた後、

「それは自分が悪い。ゲームの中ではそんなに日常茶飯事だ。お前が、どうあろうとゲームオーバーになろうとも俺には関係ないな」

 と、言い残して一人どこかに歩き出した。

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