007  無職になるという事は人生の墓場である②Ⅰ

「あーあ、今日もまけたじゃねぇーか」

 剣次けんじは、ゆっくりと歩きながら競馬場から帰るところだった。

 ついさっきまで競馬場でクエストの稼いだ全財産をつぎ込んで一発の大一番に掛けたが、すべてを溝に捨てた。

 隣で一緒に歩いていた圭介けいすけは、頭を抱えながらこの後のことを恐ろしそうに考え、帰るのがだんだん怖くなってきた。

「この後、由香里ゆかりさんと真理まり姉に何といえばいいんですか? 知りませんよ、僕は……。僕の賞金は絶対に渡しませんからね」

「いいじゃねぇーか‼ こっちだってなぁ、色々とあるんだよ。競馬にパチンコ、あるいは宝くじ、後、ゲーセンとか……」

「あんた、本当に何もわかってねぇーよ。劣化していっているとしか、誰も思わねぇーよ」

 圭介は、剣次を睨みつけながら溜息が何度も出そうだった。

 すると、剣次の目の前に何か硬い影の物体が当たった。それは一人の少女だった。

 少女は血を流して意識を失いかけていた。

「ギャッ、ギャアアアアアアアアアアアアアアアアア‼」

 剣次は、びっくりして思わず叫んでしまう。傷も多く、呼吸が小さい。血が止まらずにすぐに病院に行く必要がある状態だった。

「け、剣さん。ど、どうするんですか?」

「し、知らねぇーよ‼ 大体、こいつが俺にぶつかってきたんだぞ‼」

「それよりも早く病に連れて行かないと、死んでしまいますよこの子……」

「そ、そうだな。で、ここから近い病院って?」

「そ、それは……。あ! 確か、東の方にあったような気がします」

「よし、行くぞ‼」

 剣次は、近くを通っていた車を奪い、自分が運転席に乗ると、圭介と怪我を負った少女を後ろに乗せた。

「すまないが、少し借りていくぞ‼ 用が終わったらすぐに返す‼」

 そう言って、車を発進させた。

「あ、おい。か、返せぇえええええ‼」

 車の持ち主は叫んで、追いかけてきた。

 だが、それはまだ、序章に過ぎなかった。剣次が、ものすごいスピードで走らせていると、後ろから何やら大砲的球が飛んできた。

「剣さん‼ 避けて、避けて‼」

 圭介は何度も叫んで運転する剣次に指示を送る。

 車は神回避を何度も繰り返し、街の中を安全運転なしで走っていく。飛んでくる弾は地面に落ちると、爆発し、そのたびに地面に穴が開く。

「そこを右に曲がれば、すぐに病院に着くよ……。は、早く……」

 いきなり、少女がかすれた声で車の振動がくる中、話し出す。

「い、意識が戻った‼ し、死人が生き返ったああああああ‼」

 圭介は、びっくりして横に飛び跳ねる。

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