006  無職になるという事は人生の墓場であるⅡ

 刀は一つ向こうの方に飛ばされ、右手に持っている一本の刀しかない。

けんさーん‼ こ、こいつ僕を食べようとしていませんか? ね、ねぇえええええ‼ 助けてくださいよ。は、早く‼ し、死ぬ‼ 僕はこの世界ではしにたくありませんって‼」

 剣次けんじは、立ち上がって、

「ハハハ、大丈夫だ。そこで待っていろ‼」

 そう笑いながら巨大な亀に向かって真正面から走ってくる。

「おい、そこのガメラもどき、いい加減に前足を下ろした方がいいぜ‼」

 と、カメの甲羅の腹を蹴り飛ばして背中から落とした。宙に浮いた圭介が、

「あ”あ”あ”あ”あ”あ”‼」

 と叫ぶが、そんなの聞いておらず、剣次は圭介けいすけを助けずに壁の腹の上にそのまま飛び移った。

「ごめんな。さすがの俺も金が必要なんだよ‼ だから、俺のためにその体を売ってくれやぁあああああ‼」

 そう言うと、剣次はカメの分厚い腹に大きな傷を入れた。

 カメは、ピクッピクッ、と痙攣けいれんをしながら泡を吹き気絶していた。


 それから一時間後、『ライトソウル』の本部施設の前にさっきまで戦ったカメに金色のペンキが塗ってあり、道端に堂々と置いてあった。

「なあ、俺は『金色のカメ』取って来いと言ったけど、何、これ? どこぞの怪獣さん?」

「何を言っている。よく見ろ。金のカメだぞ」

「いや、違うよね‼ 明らかに違うよね‼ ふざけんじゃねーよ‼ いい加減にしろ‼」

 イライラしていた紅葉が、剣次をアッパーカットで拳を上げ、ぶっ飛ばした。

 吹き飛んだ剣次は、人面に倒れると、頭を押さえてゆっくりと立ち上がる。

「剣次、ごまかすときは男が女に言えない時にしておけ‼ それだけで十分だ」

 と、紅葉は煙草にライターの火を点け、ゆっくり吸うと、煙と一緒に息を吐いた。

 だが、そのきめ台詞の様な名台詞はそこまでかっこよくはなかった。

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