第2章 無職になるという事は人生の墓場である
005 無職になるという事は人生の墓場であるⅠ
「こらー、剣次。お前がクエストいかないからギルドの金が少なくなったじゃねぇーか‼」
「知るかよ‼ いちいちうるせぇ―な
ギルド『ライトソウル』の本部施設内でギルマスの
由香里は、剣次が所属するギルドマスターであり、剣次にとっては長い付き合いのある人物である。
「いくらクエストが面倒だからって言っても限度があるだろうが‼」
由香里がそう言いながら、剣次の頭にげんこつをくらわした。
彼らのギルドは三階建ての一軒家並みの広さであり、中は結構広い。一回は由香里の住まいであり、二階は会議室。三階が剣次の住まいとなっていた。
と、そんなときに『ライトソウル』を誰かが訪ねてきた。それはソロプレイヤーであり、名のある人物・
赤色のコートを纏いながら二丁の拳銃を保持していた。
「よう、久しぶりだな。剣さん。少し頼みごとをしたいんだが……」
と、久々に再開した杉浦に対して剣次は、
「うるせぇ‼ 今は忙しいんだよ‼ 久々に顔を出したと思いきや頼み事か? 金の用意できているんだろうな⁉」
と皮肉っぽく言った。
杉浦は、笑いながらジェスチャーする。
「おいおい。俺を誰だと思っているだ? 金もあれば女遊びも豪快。誰もが一度は名を聞いたことがある杉浦紅葉さんだぞ‼ 金の事なら多少心配するな。たぶん、大丈夫だ……」
最後の方は自信がなさそうに呟いた。
剣次への頼み事を話し始めた。
「それがな。この近くの湖に金色にカメを捕まえてきてほしいんだ。意外と、それが高額な値で売られるらしい。儲けはその半分だ」
とそう言った。
「仕方ねぇーな。やればいいんだろ? 半分ではなくて6:4な。それなら手伝ってやる。それでいいよな。由香里」
「ああ、私は金さえ入ればそれでいい。紅葉。それでいいかい?」
「ちぇっ、仕方ないな。それで手を打とう」
紅葉は、場所を教えると、自分は他に仕事があるからと、どこかに消えていった。
剣次と圭介は、支度の準備をすると紅葉が教えてくれた湖へと向かった。
湖には、誰もいなかった。これなら簡単に終わるだろうと思い、まずは釣竿を用意し、餌をつけると、湖へ放り投げた。
「剣さん。これで本当に金色のカメが釣れると思います?」
「さあな、俺がするわけないだろ……。奴が言うからには本当にいるんだろ? ほら、よく見ろ‼ 金のカメではなく、
剣次リールを回し、釣り上げた魚は本当に金目鯛だった。
「え、この湖って金目鯛が釣れるの?」
「だって、ここは法則性のない世界だから釣れてもおかしくないだろう。ああ、でもどうすっかな? 帰って刺身にするか、焼き魚にするか……」
剣次はクーラーボックスに金目鯛を入れた。
それから一時間。二時間。何も釣れないまま時間だけが過ぎていく。
「すみません。もう、帰りませんか? あれが金のカメって事にして……」
「ま、そうだな……」
二人はそう言いながら帰ろうとした。その時、
「ギャアギャア‼」
と、湖の方から聞こえた。
二人は振り返ると、そこには黄金というよりも馬鹿でかいカメがどっしりと構えていた。
「すみません。あれなんですかね? 確か、紅葉さんは金色のカメと言っていませんでしたっけ?」
「うん……。言ってたね。これなに? ゴジラ?」
「いや、ゴジラというよりもガメラじゃないんですかね?」
二人はそのあっけない大きさにドン引きしていた。そして、剣次は一本の刀を抜くと、
「ねぇ、これでいいよね? これが金のカメでいいよね?」
「いいんじゃないですか? 僕は知りませんけど……」
「そうだね。後で、金のペンキでも塗っておけばバレねぇーよな‼」
そう言うと、カメに向かって斬りかかった。
何度も、斬ろうと試みるがそのたびに自分の体を引っ込める。そして、一瞬のスキを逃さずにカメは尻尾で剣次を振り飛ばした。
剣次が気にぶつかり、腰を痛めると、次は圭介に牙を向けた。
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