004 ゲームの世界と現実の世界は一緒だⅣ
男は、腕を組み、部屋の周りを見渡すと、
「俺だってギルドというか、まあ、そんなところに入ってる!」
と、言って自分がギルド『ライトソウル』に所属している
「まあ……と言っても、そこそこしか稼ぎのないギルドだけどな。所属しているメンバーは現在二人。やっとのことで生計を立てているって感じだからこちらとしては入ってくれると助かる……」
と言っているが、
しかし、元々この世界で生きることは無理があった。剣次と出会ってしまったのが運の悪さではなく、この五年間、まともな生活を送れない。
圭介は、この生活に嫌気がさして、もう嫌だと思い、
「真理姉。僕たちもそろそろどこかのギルドに入る気ありませんか?」
と言い、真理はその言葉を聞くと、躊躇い首を横に振った。
「それは無理だわ。でも、信用できる人がいるならできるかもしれない。それでも私たちはマスターを失った。断りなしに他のギルドに入る事なんてできないわ」
しかし、そう言い切っているが、確かに飢え死に寸前までは来ていた。
いくらクエストを完了したとはいえ、安定した職でもない。また、真理が職に就いたとしても結局は安い賃金で、働いても儲からないことを分かっていた。圭介には、真理の考えていることが分からなかった。
圭介だって分かっていた。
「だとしても、この世界では一人で生き抜くことは難しいんですよ。それに二人でも一緒だと思うんです。でも、そういう人がこの世界には何万、何億人いるかもしれないんですよ!」
そう言って悔しそうにしている圭介に、剣次は、
「でも、不可能なら可能にすればいいけどな」
そう言うと立ち上がった。
「金が無ければ知恵を出せばいい。知恵が無ければその知恵を得るために教えてもらえばいい。人ってそういうものだろ?」
圭介はハッとして頷いた。それから真理は、クエストに行くと言い残して、一人でどこかに出かけて行った。
その後を剣次の馬を使って、二人は真理の後を追った。
彼女の行き先は山の中の熊モンスターの退治。
圭介は、馬からもっと早い車を借り、近くの山へと森林を抜けながら車は傷つき、奥へとはいって行った。
そして、交戦中の真理を見つけると、剣次は自分の刀ともう一つの刀を握った。
剣次は二刀流だったのだ。どんどんモンスターを斬りきざんでいった。剣次は、二つの刀をうまく利用し、圧倒的な強さだった。
真理は、
「何……。あの強さ……。私でも一体でも十数秒かかっていたのに、何者なの?彼は……」
驚きながらその場に立って、剣次は涼しい顔で次々と斬っていく。
「あのな。クエストの討伐とかは、一人でやるもんじゃねぇ‼ 例え、一人で立ち向かおうとするのは、それは捨て身の覚悟がある奴だけだ! 死ぬ気のねぇー奴は、その覚悟を持つ資格はない‼ 俺みたいなちゃらんぽらんの奴ほどがいいのさ」
と言った同時に、最後のモンスターを殺した。返り血が飛び散る中、剣次はその中から戻り、二人の前に立つと、刀についた血を払い落とし、鞘に納めた。
そして、山から戻ってきた三人は、剣次が戦闘に歩いている姿を見ながら真理は圭介に言った。
「あの人は不思議な人ね。あの人とそっくりだったわ。もしかしたらあの人は私たちを変えてくれるのかもしれない」
圭介は、剣次の後姿を見て、あの人と重ねた。
お前はいつか強くなる。その時が来たらきっと誰かが手を差し伸べてくれる。きっとな————
「真理姉。たぶん、あの人はすべて考えているようで考えていないと思いますよ。それがこっちの世界でも向こうの世界でも同じですよ。でも、あの人といれば、いつか何かが分かると思います」
二人は彼と一緒に浅草に帰還した。
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