ももちづか その2


「どう、少し落ち着いたかしら」

「……うん」

前の席に座っている千鶴花ちづかの問いに机にうつ伏せになっている百々ももは小さく答えた。


「あきれた子、まったくいきなり人を叩くなんて。私何かおかしかったかしら」

百々は顔を上げた。

「ごめん、千鶴花」

そういった瞬間、千鶴花は百々の頭をバシィと叩いた。

「いっ」

「これでおあいこよ」

「うん……」

もう一度、百々は顔を机に伏せた。

「って、百々……どうしたの、大丈夫!?」

「大丈夫、大丈夫。千鶴花は私と違って力ないから」

「じゃあ、顔をお上げなさいな。見えないでしょう」

机に突っ伏してる子の両肩を掴み力いっぱいゆする。

「うーあー、ゆするなあー」

観念したように百々は体を起こし、向かいに座っている彼女を見た。

千鶴花はあきれたようにふふっと笑った。


百々は口を開く。

「どうして私なんかと仲良くするの? クラスは違うし、他にもいっぱい友達いるのに」


「はぁ、あなたはバカね」

「だってそうじゃない。お嬢様と馬鹿な私。つりあわないじゃない」


千鶴花はもう一度百々の頭を力いっぱい叩いた。

「あいたっ」

今度は頭を押さえるほど痛かった。


「私はね、本が好き。その中でも漫画のファイティングスクランブルが好き。

その作品のキーホルダーストラップをつけたあなたを初めて見た時にこの子と絶対仲良くなろう友達になろうと心に誓ったの」


「そういえばそうだっけ、前にも聞いたような」


「同じものが好きならば立場なんて意味無いでしょ」

千鶴花はドヤ顔しながら言う。


「それに、あの人たちに話してもナニソレって返されるから意味ないのよ。

この良さが分かる百々じゃないと駄目なのよ」

自信満々で喋る向かいの子を見た百々は私となんら変わんないのかもと心の中で思い、

「千鶴花、ごめんね」と話の途中で言った。


いきなり言われた千鶴花は一瞬驚いた顔をしたけどすぐにニコッと笑って「いいえ」と返事をした。


教室の窓の外は夕日で紅く染まっていた。


「もう夕方なのね。百々帰りましょうか」

「うん、一緒に帰ろ千鶴花」


百々は急いで机の中にある教科書、ノートを鞄に入れた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る