ももちづか その1

 私は殴った。友達の左頬をグーで殴った。

衝撃で相手は後ろに倒れてしりもちをついた。

殴った右手はそのままにして私は「ばかやろう」と叫んだ。


百々もも……」

と、そう千鶴花ちづかは呟いた気がしたけど私は耳から意識を離して、

勢いよく振り返ったまま走って中学校の屋上から逃げた。


もとはといえば何で普通より目立たない私と、才があるお嬢様が仲良くしてるんだろ。

おかしい、おかしすぎる。

共通点なんてないのに。なかったはずなのに。


「もうわけがわかんない、わかんない」


走りながら目からは涙があふれ出る。


「なんでわたしなんかにつきまとうのよ」


誰もいない学校の廊下でがむしゃらに叫ぶ。


「なんでって、アナタがワタシの友達だからよ」


2階の奥にあるクラス教室前でその言葉を聞いた瞬間、

百々の左手はぐっと引っ張らた。


「うわっ!!」

体制が崩れる。


声の主なんて気付かなかった。

そのまま倒れると痛いだろうなとしか頭の中には無かった。

自然に身を任せるしかなかった


ぎゅっ。


倒れると思っていた自分の体は倒れず、後ろから誰かに抱きしめられた。

シャンプーのいいにおいがする。


「このシャンプーの匂い……」


百々は知ってた。この香りがするシャンプーを使ってる人を。

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