押衣晴名(おしいはるな)は好きといった

 「つみちゃんはさぁ、好きな人いるの?」

晴名はるなの問いに巴積はつみは一瞬ドキッとした。


 「うぅ」と一言発して首を縦に振ると晴名はそっかと言った。

時計は午後6時を表示していた。


 「その人にちゃんとそういうこと言っときなよ。後悔しないうちにね」

つみは黙って聞いている。

 「いつまでもいるといいけど、いなくなることだってある。あたりまえの毎日が急に変わってどうしようもなくなるかもしれない。あの時、そうしていればよかったってずっとつきまとう」

つみは下を向いている。


 「私は言えなかった。その当たり前が続くと信じていたから。

でもそれが無くなって結局そのまんまで気付けば好きなごっこは出来なくなってた。一人になってた」


缶コーヒーを一口飲んで話は続く。


 「でも何だかんだで生きてるし、そんな中でかわいいかわいいつみちゃんに出会えた。意外と天は私を見てるんだなあって思うと案外いけるものよ」


晴名はニッコリ笑って巴積の顔を見る。


 「!?」


巴積は急に可愛いと言われ顔がぎゅっと赤くなるのを感じ、

自分より少し長く生きた人の顔、瞳を見返した。


 店の時計は6時30分を示していた。


 「さあ、今日も終わりにしましょう。つみちゃん片付けよう」


勢いよく机を叩き、晴名は立ち上がった。

さっきまでの不安さは無くなりケロッとした彼女に違和感を感じながら巴積は片付けを始めた。

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