手にふれて
相田秀介
勉強なんてめんどい帰りたい。てか何で委員長なんかと。
今回のテストは悪かった。いつもはそれなりにできたけど。
まあ終わったものはしょうがないと
追試に向け高校の図書室で勉強を始めてから一時間。
流石に飽きて帰ろうかなと教科書、ノートを片付けようとしたその時、
「ちょっと! 夏井さん、まだ終わってないわ!」
と強い口調が百々にあたった。
「いやぁ、今日はもう沢山やったしもういいじゃん、帰ろ」
「ダメよ、このページを見ながら問題を解くまで帰りません!」
机の向かいに座っている
押井有利乃は同じクラスで委員長もしている。
勉強オッケー、運動オッケー、人気もある。
まさにパーフェクトな女の子だ。
そんな人が私の勉強に付き合っているのかがよく分からない。
特に仲良しというわけではないのに。
「何か腑に落ちない」
むすっとした表情の百々に有利乃はにっこりしながら、
「わからないところあるの? 教えてあげるよ」と。
「いや、そうじゃなくて。私達そんな仲良かったっけ。一緒に勉強するぐらいの関係だっけって考えてたの!」
百々は強い口調で話した。
その言葉を聞いた有利乃は手にしていた本を机に置いて答えた。
「あたりまえじゃない、同じクラスだし、ましてや大好きな友人を助けるのは当然のことよ!」
「はぁ、なにそれ。初耳なんだけど」
突然の告白に頭の中は真っ白になった。大好きとまで言われもう何が何だか。
これはもう勉強どころではない。
有利乃の話は続く。
「ほんとはもっと一緒に話したいのに周りのタイミングとか、いざやろうとしても押井さん何処かに行くしで上手くいったためしがないの」
力説している顔はマジだった。
「今回のテストで少し悪い点を取ったって聞いた時は今度こそ誘わなきゃ今度こそ親密にならなきゃって。
計画を練りに練ってようやく今日達成できたの」
百々はあっけにとられ、この子わかんないわーと。
「だからね、もっともっと仲良くなりたいから夏井さん、いや百々ちゃんも私にどんどん話しかけていいからね!」
「う、うん分かった、分かったから」
友達は一人しかいない。その友達も別の高校だ。
これから先の高校生活、一人でいるより誰かといたほうがいいなと思った百々は、
「ありがとう、有利乃」と小さく呟いた。
それを逃さず聞いた彼女は笑って「それじゃあ、残りの問題もささっと片付けちゃおうね」と勉強の続きを進めた。
上手く話を逸らせたと思った百々は、
「有利乃のアホ」と言った。
-
家に帰って自分の部屋でぼけえっとしていると
机の上に置かれていたスマホが鳴った。
手に取り画面を見ると一通のメールが届いていた。
「今日はお疲れ様。勉強よく頑張ったね。
これなら追試も大丈夫だよ。百々ちゃんならできる
ちゃんとできたら、今度は遊びに行こうね。有利乃」
「あ、有利乃からか。そういや連絡先教えてたっけ」
学校で嫌々ながら追試勉強をして、どうにか彼女の助けをもらい終わらせて、最後にアドレス交換をした。
それが早速こんなカタチでくるとは。いやはやと思った。
「うん、返信するか。今日はありがとう助かったよ。まぁテストは頑張る」
そう文を書いて百々は送信ボタンを押した。
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