第9話「ルール変更のお知らせ」

 退場者3名と自己記録更新の9話。前半のクライマックスがルーラ退場の4話だとしたら、中盤のクライマックスはこの9話です。短編やアニメオリジナルのエピソードを加えることなく、原作の流れをほとんどそのまま踏襲しているのも4話と同じですね。この2話はそれだけ重要なエピソードなんですよ。下手に変えちゃダメなんです。どんな事情があっても絶対に削っちゃダメなとこがあるわけです(以下で詳しく触れます)。


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 まほいくでも例外的にヒロイックでかっこいいエピソードです。復讐や生き残るための殺し合いではなく、殺してでも止めなければならないという大義名分がある。また、斜めに構えた感じのリップルがピュアな憧れを口にして、逃げ腰だった相棒を動かす。そこでパートナーシップが生まれるっていうすごく熱い話なんですね。そこに強敵をいかに攻略するかっていう異能バトル的なおもしろさも加わってくるんだから、ここだけ少年漫画をやってるようなものです。


 ただ、アニメではここに重大な改変……いや、改悪があるんですね。こればっかりはもう擁護しようがないんです。何かって言うと、勝負の決め手となる奇策をかなり簡略化しちゃってるんですね。はっきり言ってチープなんです。見てて「え、そんな簡単に?」って思いますよね。ここばっかりは、それが正しいんです。原作のメアリだったら、あんな簡単には倒されてくれません。


 異能バトルものとしてのまほいくってのは、ここがピークと言っても過言じゃないんです。あえてやらない理由なんてのはまずないんですね。ラ・ピュセル、クラムベリー戦を補完するくらいならまずこっちをやれよ、と。作画コスト、構成……何らかの理由でできなかったと考えるしかない。考えるしかないんですけど、個人的にアニメで一番がっかりしたところでした。


 さて、気を取り直して、トップスピードです。この人のドラマは生き延びるために逃げ回っていたのが、相棒の情熱にほだされて一緒に戦うってとこですよね。それは魔法少女らしいヒロイックな活躍でもあるんですが、アニメではそのシーンに合わせて箒がバイクになって、マントが特攻仕様になる。これがすごく暗示的ですよね。


 つまり、このときのトップスピードはむかしに、「普通」じゃなかった頃に戻っちゃってるんです。だから、このシーンはただかっこいいだけじゃなく、せっかく普通に暮らしてたのにむかしの血が騒いで全部ご破算にしてしまったっていう含みがあるんですよね。すごくまほいくらしいアイロニーなんです。


 その意味でも、やっぱりあそこはアニメまほいくでも屈指の名シーンだと思います。作画コストの問題を逆手に取った本当に見事な演出ですよね。だから、この回は一概になじりたくもないんです。


 シスターナナの最期についても簡単に。窓の外の惨状をよそに、自死の道を選ぶ彼女ですが、これってどういうことかというと、魔法少女とシスター、どっちの「プレイ」もやめてしまったってことなんですよね(キリスト教で自殺は大罪)。これまでの欺瞞を認めて自分に正直になるっていう、見方を変えればすごくポジティブなシーンなんですよ(原作の、「プレイに殉じる」というニュアンスはアニメでは読み取れないと思います)。ただ、その結果が自殺ですから、これもやっぱり相当な皮肉なんです。

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