第8話「ゲリライベント発生中!」

 このあたりからどんどん人が減っていきますね。戦闘もさることながら、死んだ人、これから死ぬ人と、フラッシュバックもせわしない。ラ・ピュセルVSクラムベリー戦に続いてウィンタープリズンVSメアリ戦という幻の一戦を映像化してみせたと思えば、入手が難しいチャーミングな掌編「奥様は魔法少女」のネタを拾ってくるなど緩急が激しい展開となっています。


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 ウィンタープリズンですが、実はユナミナ並みに地味な死に方なんですよね。なんでかっていうとこの人は最後まで何ひとつ変わんないんです。この人の戦いはいつも奈々を守る戦いなんです。それが最期までぶれない。ラ・ピュセルみたいに死を目前にして戦う理由が変わるわけでもないんです。


 だから、愛する人を守って散ったというのに全然ドラマチックじゃないんですね。心臓を刺されたときでなく、腕を失ったときに死を実感するっていうポエジーがあるだけです。5話で触れたように、自己実現の願望も薄い。むしろ、今回わかるのはむしろなるべく変わりたくない、変身前に近づけようとしてるってことですよね。


 一方、パートナーのシスターナナはというと、これはもう大変です。雫をゲームに誘うエピソードが回想されていますが、あれは自分が巻き込んだっていう後悔ですよね。雫、奈々とも回想にマフラーが出てきますが、これはマフラーだけに巻き込んでしまったという、えげつないギャグなんです。この人は言うなれば、自己実現の負の部分、加害性を背負うキャラクターなんですね。


 今回、なんとも暗示的だったのが、ウィンタープリズンが「シスターナナ」に刺されてるところです。メアリ、クラムベリーの二強との戦いから生還してきたウィンタープリズンが、シスターナナにはあっさり殺されてしまうっていう、これはとんでもない皮肉ですよ。


 それをシスターナナは目の前で目撃してるわけです。自分がウィンタープリズンを殺すところを。そのくらいやらないとこの人は気づかないんだっていう、これも強烈な皮肉ですよね。実際、先の二戦で凝りてればこんなことにはならなかったわけです。これまで、直接的になじられることがなかった彼女が、そういう、この上なく露骨なかたちで罪を告発されるのが今回の話なんですね。


 トップスピードにも触れておきましょうか。「奥様は魔法少女」ネタなのですが、原作とはシチュエーションもエピソードの役割も変わっています。早い話が、伏線と死亡フラグの設置ですね。原作では、この時点ではまだ競争もはじまってないし、妊娠もしていないんです。それがアニメでは、妊婦になって行動の自由が利かなくなってきつつある……一方で、魔法少女として競争に奔走するつばめ/トップスピードの二面性が描かれているんですね。


「普通」の生活と魔法少女としての生活。その二つの生活が、原作よりも鮮烈な対比で表現されているんです。言い換えるなら、つばめの危うさがよりはっきりとした形で描かれているんですね。微笑ましいだけの話じゃないんですよ。むしろ、結婚生活の抑圧を描いてる。いっそ抽象的なほど「理想的」な、主婦としてのつばめ像っていうのが、それをかえって強調しているんですね。

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