第13話 竜殺しと仕事の報告
「お疲れ様です。それでは、報告をどうぞ」
ギルドへ戻るなり、受付嬢に依頼の達成報告を行う。といっても、言うことは一つだけ。汚染の原因らしきスライムを退治した、それだけなので、ほんの短い間で終わった。
「二人はどうしました?」
「家に帰らせたよ。食い物扱ってる場所に、糞まみれの人間を入れるのはマズイだろう」
「ああ。それはそうですね。で、無事なんですか?」
「今は、な。頭までどっぷり糞だまりに使ってたから、後で病気にはなるかもしれん」
後のことまで面倒見ろ、とまでは言わないでほしい。俺は傷つけるのは大得意でも、その逆は全く苦手で、どうしようもないのだ。
「そうですか。ところで、二人への評価は?」
「0点以下を付けられるのなら、付けてやりたいよ」
ベテランでも、駆け出しでも、狩場では常に気を張っておく。これは基本中の基本であり、それを怠ってさらに先達の忠告も聞かず突っ込むなど。あいつら自殺願望でもあるのか。
「辛辣ですね」
「もう少し詳しく話そうか? 妥当な点数だとわかってもらえるはずだ」
「いいえ。あとで二人からも話を聞いておきましょう。ちなみにあなたの評価は80点です。彼らを見捨てず、生かして連れ帰ったのが高得点です」
「どうも」
「彼らを力づくでも押しとどめていれば満点でした。あと、彼らの処分も。しばらく草むしりでもやってもらいます」
「引退させたほうがあいつらのためじゃないか?」
「一度目の失敗は許してあげましょう。彼らもこれで懲りたでしょうし、様子を見させてください」
「……そうだな。出過ぎた発言だった」
俺は処分に口を出す立場じゃない。評価を下して、その後の判断は聞いた人に任せればいい。
「彼らへの罰と、あなたへの迷惑料として、二人の報酬を何割かあなたのものとします。それで気を収めてください」
「気持ちはありがたいが、いらんよ。金には今のところ困ってない。それよりも空き家か、貸家がないか?
「おや。この町に住むおつもりで?」
「いつまで住むかはわからなくても、拠点はちゃんとしたのがよくってね」
「わかりました。では資料を用意します。準備ができるまで、ランチでもどうぞ」
そうは言われても、鼻の奥にまだクソのにおいがこびりついている。しばらくは、とても飯を食う気分にはなれない。建物の外に居るから、とだけ伝えて、その場を離れた。
そのあと、一日の残る時間を拠点選びに費やして、候補の一番目に決まった場所は墓場の隣の空き家。日当たりのいい一軒家だが、夜になるとゴーストが出てきてうっとうしいのだとか。どんな感じかと聞けば、寝る間にずっと蠅がぶんぶん飛び回っているような、という非常にわかりやすい例えが返ってきた。
それは誰も住みたがらないだろう。
「気が変わったらまたギルドへいらしてください。三日以内でしたら、契約を取り消せます」
「ありがとう。とりあえず一晩過ごしてみるよ」
案内人を見送って、袋から竜狩りの武器を取り出して壁にかける。ゴーストなんて、元を辿れば死者の怨念とか未練とか、そういうものだ。なら、もっと強烈な念を持つものを置いておけば怖がって寄ってこないだろう。毒をもって毒を制す、というやつだ。
建物自体は石造りの小さな家。しかし一人で暮らすには十分な広さ。しかし前述の理由によって、安く手に入れられたというわけだ。
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