第5話 高柳さんは性癖がおかしい
今回は僕の性癖について語ろうと思う。
性癖といっても別にエロい話ではないので、そう身構えずに気楽な気持ちで流し読みして頂ければと思う。逆にそういう話題を期待していた人がいたのなら、それは申し訳ないとは思うが。
僕は異世界ファンタジー系作品を書くのが得意だ……と以前語ったと思うが、それは昨今流行りの『チート』『ハーレム』『俺TUEEE』『追放成り上がり』要素を含んだ話を書くのが得意というわけではない。
むしろそれは逆に僕にとっては苦手要素で、僕自身はそういうファンタジー系小説は殆ど書けない。そういう要素を含んだ作品を書くこともあるが(強いて言うなら現在執筆中の作品が若干主人公チート要素を含んではいるのだが)、主人公が何の苦もなく最強の力を振り翳して異世界を無双しながら生きていく話にはあまり魅力を感じられないのである。
僕が書くのを得意としているのは、登場人物が苦労し、悩み、絶望し、果てに狂い果てて凄惨な死を遂げるようないわゆる『鬱展開系』の物語だ。そういう『どんなに現実に抗っても結局は救われることのない哀れな話』を考えるのが好きなのである。
そういう理由もあって、僕がこれまでに書いてきたファンタジージャンルの作品の大半では必ずと言って良いほどに死人が出る。五体満足な死に方をしていないのも特徴のひとつで、セルフレイティングを付けていなければ運営から警告を食らっても文句は言えないレベルの描写であることは否めない。
これは完全に蛇足ではあるが、僕はFF専門の同人作家としても活動しており、未だに二次創作物を作っては作品を公開している。
その作品にも無論僕の趣味は反映されていて、僕の作品の中では登場人物たちが当たり前のように無残な死を遂げている。平気で四肢が吹っ飛んだり内臓が爆砕したり果てには溶解液の中で溶けていく様が普通に描かれているため、作品には年齢制限タグを付けなければならないレベルである。
通常何らかの商業作品の二次創作といえば、推しキャラ同士の恋愛を描いたり何気ない日常風景を妄想して書いたものだったり、推しキャラが幸せに過ごしている様子を綴ったものが大半だろう。
そういう意味では、僕の書く作品は二次創作の中でもかなり異質の存在であると言える。作品に寄せられる感想の中には「悲しい」「惨い」「怖い」などといった言葉が結構あったりする。
しかし、そういう系統の作品を書き続けてきたからこそ、僕はその場所では『異質の作家』として読者たちに認知されるようになり、今ではそれが僕にしか書けない持ち味として認められるようになり、僕の書く作品の雰囲気が好きだと言ってくれる人まで現れるようになった。
オリジナル作品でも、根底にあるものは同じだと思うのだ。
今は共感してくれる人がいなくても、いつか必ず、僕の性癖を理解してそれを面白いと感じてくれる人が現れるはず。それを信じて己が書きたいものをひたすら書き続けることこそが『作家として存在する』ことなのではないかと僕は思っている。
PVや評価を獲得することに躍起になって自分自身の持ち味を見失うようでは駄目なのだ。それではいつまで経っても『どんぐりの背比べ』にしかならない。流行りモノを書くなとは言わないが、その中に、ひとつだけでもいい、自分にしか書けない何かを入れることを忘れてはいけないと思う。
僕は昔はかなりのゲーマーだった。特にRPG系が好きで、その中でもFFシリーズはかなりやり込んだと思う。
他には、プレイこそしたことはないもののバイオハザードやクロックタワー、デッドバイデイライトみたいな作品はかなり好きで動画を見たりネタ小話を読んだりは結構やっていた。
思えば、僕が書く小説の雰囲気はその辺りに影響を受けているのだと思う。
近年ではTRPGに密かにハマっており、その中でも永い後日談のネクロニカ(名前出していいのだろうか、これ……)にはかなり夢中になった。どれくらい夢中になったかというと、自分でシナリオを作って二次創作小説を書くくらいにハマっていた。あれの醸し出す雰囲気、世界観こそが僕が書きたいと思っている物語の『究極の理想』なのだろう。
究極の鬱、究極の絶望、どんなに抗っても報われない現実、そんな中でたったひとつだけ輝く希望の光……それを掴もうと必死に前へと這い進む主人公の姿。それを自ら描くために、今日も僕はひっそりとWEB世界の片隅で作品を書き続けているのだ。
性癖がおかしかろうが、それを隠してまっとうなふりをする必要なんてない。
逆に胸を張ってそれを作品にしてしまえばいいと思う。この世界は広い、どんな作品であろうと、その作品が自分の趣味にストライクだと言ってくれる読者が、少なからず存在しているはずなのだから。
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