第3話 高柳さんは物乞いが嫌いである
世に自分の書いた作品を公開しているアマチュア作家たち。彼らが自分の書いたものをわざわざWEB小説投稿サイトに上げているのには、色々な理由があると思う。
自分の書いた作品を読んでもらいたいから。
プロの作家になりたいから。
まあ、書き手の数だけ理由はあるだろう。
ツイッター上では、色々な人が呟いている『自作の宣伝』を見ることができる。
そのこと自体は不思議なことでも何でもないし、僕自身も更新した自作の宣伝をツイートしているから、作家の端くれならば当たり前のように持っている自己顕示欲の一種なのだと言うことができる。
そんな数多くある宣伝ツイートの中に、こんな言葉を書いているものが紛れているのを時々見かけることがある。
「当方の作品に感想、レビューを書いてくれた方にはこちらからも貴方の作品に感想、レビューを書きます」
いわゆる相互評価と呼ばれているものである。
正直に言おう。僕はこういう発言をする作家の作品には殆どろくなものはないと思っている。
感想やレビュー(サイトによっては評価ポイントなどといった項目もあるが)というものは、その作品を読んだ読者が感じたことを作者に伝えたいと思った時、あるいは世の人たちに「この作品はこんなにも素晴らしいものなんだ」と魅力を伝えるために書くものである。
作者から要求するのは流石に違うんじゃないかと思うのだ。
そんなことをしてまで感想を集めて何がしたいんだ?
自己満足のため?
優越感に浸るため?
作品の宣伝のため?
それで半ば無理矢理といった形で集まった評価ばかりが付けられた作品で読者が付いて来ると本気で思ってるのか?
だとしたら随分とおめでたい思考回路の持ち主である。
趣味で書いているだけならばともかく、本気でプロを目指しているのなら、今すぐそんな物乞い思考は捨て去るべきである。
僕も作品の宣伝のためにあれこれしてはいるが、自分から評価を求めるようなことは基本的にしない。作品の更新情報をツイートした時に「感想等お待ちしています」といったことを書いたことはあるが、評価してくれと求めたつもりは一切ない。最終的に作品を見て感想を書いてくれるかどうかは読み手次第だと思うからだ。
此処カクヨムには『自主企画』という自分の作品を宣伝できる機能がある。
そこで結構「読み合いましょう」「感想を書きます」系の企画を見かけるのだが、そういう企画には参加者が殺到しやすい傾向がある。凄い規模のものになると参加者が三百を超えていたりとか……こういうのを見ていると「参加者や企画主は本当に参加作品を読む気があるのか?」と疑問に思うことがままある。
企画自体は悪いものであるとは言わない。人の作品を読むということは自分の執筆力を磨く勉強になるし、企画主が感想を書くということはきっと企画主が感想を書く練習をしたいからそういう企画を立ち上げたのであろうからだ。
僕も、たまにそういう企画に自作を登録することがある。僕の作品が他者にとってどういう印象を与えるのかを知りたいという欲があるからだ。
これは完全に私事だが、僕自身も現在企画をひとつ立ち上げている。僕自身の勉強のために作った企画だが、有難いことに現時点で七十近い作品が参加してくれている。
予想外の数なので、おそらく企画が終了するまでに全ての作品に目を通すことはできないだろうが、どんなに時間がかかっても必ず参加した全ての作品を拝読させて頂こうと思っている。それが企画主としての義務であると思っているからだ。
僕の立てた企画に参加してくれた人が、何を目的として作品を登録してくれたのかは分からない。宣伝のためかもしれないし、純粋に企画が面白そうだと思ってくれたからかもしれないし、自分も参加作品を読んで勉強しようと思ったからかもしれない。
理由は人それぞれであり、自由だ。それを咎める気は僕にはない。
感想返し目的で人の作品に足跡を残していく人も、中にはいると思う。
しかし、本気でプロを目指している作家であるという自覚があるのなら、乞食のように評価や感想を求めるような行為からは足を洗ってもらいたい。
そうまでして評価を集めることに躍起になるのなら、その分の時間を使って少しでも読み手を惹き付ける作品を書く努力をした方がよほど自分のためになると助言させてもらう。
「自分は褒められて伸びるタイプだから貶されるのは嫌なんだ」と言うような作家は、単に甘えているだけだ。
誰の目にもつくWEB小説投稿サイトという場所で作品を公開している以上は、作品を褒められる以上に貶される覚悟も持つべきである。貶されるのが嫌ならWEB上に作品を出すべきではないし、そもそもプロの作家を目指すものではない。
プロの世界はアマチュア以上に辛辣だ。大ヒットの書籍作品を出版しているプロ作家たちだって、数え切れないほどの批判や指摘を貰って、それを糧に自分たちを磨いて成長してきたのである。
鉄は熱いうちに叩くことによって強くなる。作家もそれと同じで、批判に晒された数だけ強くなるものなのだ。
叩かれることを恐れるな。作品に対する批判を貰ったら、それが自分を育てる栄養になると思って喜んで受け取れ。甘い言葉だけを聞いて育った『軟弱な温室育ち』になりたくなかったら、自分から率先して人に踏まれる雑草になれ。
そうして苦い経験を積み重ねた上にようやく咲かせた花は──何よりも美しいものになっているだろうから。
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