永遠に命はあらねども

魔女様___誰も彼女の名は知らない___は、時折僕に魔法について教えてくれた。

例えば、魔法は万能ではないとか。

魔法を使うためには、条件を揃えること、それに見合う対価が必要だった。

だから、彼女は滅多に魔法を使わなかった。



『人を呪わば穴二つって言うでしょ。

・・・それと、同じ』



姿形が変わらず、永い永い時を生きる魔女様。

彼女からしたら、僕と暮らした時間はほんの一瞬で。

その一瞬で知れたことなんかたかが知れてるけど。

彼女がとても優しい人だってことは、確かだった。




でも、魔法が万能でないように、別に彼女が不死身な訳ではなかった。

ただ、ずっと遠い未来なだけで彼女は寿命で死ぬこともあるし、もしかしたら今この瞬間に、盗賊が襲ってきて僕と彼女を殺すかもしれない。


死というのは誰にも平等だ。



『・・・私が死んだら悲しい?』


その質問に、僕の答えは何の意味も持たなかった。

だって彼女が本気で死のうとしたら、僕が万遍と言葉を並べたってあっさりと切り捨てるだろう。

『狡いですね、魔女様は』



どうしようもなく、泣きたくなった。


僕は、心の最奥で何となく分かっていたのだ。


『生きたいから、生きてるわけじゃ無いでしょう』

生きる理由はないと嘲笑った魔女様。

『死ぬ理由がないから、生きてるだけだ』



そう、死というのは誰にも平等だ。

違うのは、早いか遅いかのそれくらいで。



『そう。よく分かったね』



そんなこと、分かりたくなんて無かったのに。



『ねえ、今確信したよ。ふふふ、君の言う通り、私は狡い大人だね』





そうして、彼女は僕を一生縛り続ける呪いを掛けた。






『君が、いづれ私の死ぬ理由になる。・・・ねえ、そしたら教えてね。私の生きた証を』

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