動く屍と存在意義

『どうして、この世界で生きることを選んだの?』

ある日、彼女は唐突に聞いた。


どうして?


そんなの、数年前から決まってる。


「あなたがいたからですよ。僕の魔女様」


そう言うと、彼女は困ったように微笑んだ。





細かな年号は覚えてないし、ちっとも興味はないのだけれど。

僕が魔女様に出会ったのは、天下分け目の大戦。その、最終決戦だったらしい。

少年兵として駆り出されていた僕には、何が何だかさっぱりわからなかったけれど、負けたのは僕がいた軍。

もちろん勝ったのは、魔女様と皇夜と言う現皇帝陛下がいた軍だった。

殲滅作戦の元、僕らは皆殺しにされたんだって。

生き残ったのは、僕の他に数人だけ。

僕が生き残れたのは、なんでか全然わからない。

少なくとも、とんでもなく幸運だったんだと思う。

それからの幾年は、僕の人生の中で最も幸せな時間だったから。

魔女様と僕、ときどき皇夜陛下。

きっと彼女が僕を拾ったのは気まぐれだったんだろうけど。

何か陛下は来るたびに僕をを虐めて正直鬱陶しかったけど。

忘れられない、時間になった。



けれど、時間は止まらない。





『・・・魔女様?』


時折、彼女は酷く憂鬱そうな顔をした。

半分、心をどこかに落としてしまったような。


『どうしたの?何か、泣きそうな顔してるけど』



『・・・魔女様は』


『うん?』


『あなたには、ありますか。あなたの、

____生きてる価値は、何ですか』



時間は、止まらない。

巻き戻すことも、取り消すことも。





彼女は嘲笑わらった





『ないよ』






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