オタサ美と僕
中学生の頃、オタク真っ盛りの僕はクラスのいかにも「オタクが好きそう」な部分を詰め合わせた深夜アニメのキャラクターのような女の子に想いを馳せていた。
今考えると、とても反りの合わない相手だったなぁ。と昔を思い出すのだ。
ここではノスタルジーと、ひとつまみの軽侮を込めて彼女を「オタサ美」と呼ぶことにしよう。
ある日、僕はオタサ美にお願い事をされ「してくれたら良いことをしてあげる」と言われたことがある。
これは当時の彼女自身が「男を手籠めにできる私」という虚像に酔い、精いっぱい背伸びをした不恰好な発言であったのだが、僕は「あぁ、この子は良いところの出なのに心は売女なのだな」と心から軽蔑した。
言い方が悪い。間違った捉え方をされると心外なので弁明させてもらうが、別にセックスワーカーを蔑視しているわけではない。
ただ、彼女は一時の自己顕示欲の為に他の何でもなく中学生の自分の貧相で青っぽい性的魅力しか出せないのかと思うとスッと憧憬の念が断ち切られるのを感じ、途端にとても馬鹿で汚らしい(そんなことは断じてなく、彼女は素晴らしい人間だと信じている。)物のように感じてしまい心が嘔吐しそうな、そんな感覚に陥った。
「良いことをしてあげる」なんていうその当時の彼女に全く似合わない発言は、僕のオタサ美への憧れをきっと気付いた上でのものだろうが、まるで歳上のOLのお姉さんが一人暮らしの大学生に言うような台詞は臭すぎて僕の「センス」という鼻孔を擽るどころか苦痛という爪を立て抉り取っていった。
わずか13、14歳の年若な少女が創作に出てくるような全てを許容し、エロティックな香りを漂わすお姉さんのようなことを言うなど、それは僭称以外の何でもなく、こういったことに拘りのある僕を子供っぽく(実際子供だから正しい)、かつ激しく憤らせた。
しかし僕はチョロい人間だったので「ハイハイ」とお願い事を聞いてしまう。なんて弱い人間だろう。反吐が出る。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます