第12話

「長いお時間いただきました。

だたいま到着いたしました」

執事の格好をした案内人であろう人物がドアを開けて降りることを促される。

しかしアイマスクをしたままの状態でどこに足をつければいいのか分からず降りることを躊躇っているといきなり視界が光を取り戻す。

「失礼いたしました、どうぞお付けになっているアイマスクを外してください。もう必要はないです」

「…」

男はすでに取られた後だから一緒に乗っていた人物を見回した。

先ほどの変な格好をした女性を除き、女性は二人、男性が男を入れて四人となっていた。

年齢はバラバラで、見た目だけで判断してはいけないが若い人もいれば、最年長で60歳ぐらいの顔つきのひともいた。

皆顔合わせ、目を泳がしているところにまた執事の案内が始まる。

「ここで自己紹介されるのもなんですから、良ければ建物の中に入って一息つきましょう」

物腰の柔らかい指導に、男以外の五人はぞろぞろと付いて行こうと歩きはじめているが、男は府が落ちないと佇む。

「おや、そちらの方…あなたは行かないと言うのですか?」

先を先頭に進んでいた案内人は男に気づき声をかけて来る。

「…俺は強制的にここに連れてこられただけで参加者ではない」

冷静にそういいポケットからタバコを取り出すと一息すい、吐き出す。

「おやおや、困りましたね。ここに連れてきた人全員を案内しろとのお申し付けなのですが、あなたは参加しないと言うことですか?」

「そもそも参加する、しないってどう言うことなんだ」

「それはここでは言えません。ただ…言えることはここでリタイアされるのであれば………」

先ほどの笑顔が嘘のように真顔になり、それがなんとも言えないゾッとする顔つきへと変わる。

「ここで死んでいただくことになりますよ?」

「っは?」

「だから、不参加の場合家に返すわけにもいかず、ここで死んでもらうしかありませんね」

「そんなかってな!?勝手に俺を連れてきたくせになぜ死ななければならないんだ…?」

「そう言う決まりなので仕方ないと思いますよ」

先ほどの真顔はどこへいったのか。今は元の笑顔を見せ、ありえないことを言っている。

「…じゃあ、参加するって言うと?」

「参加されるなら話は別です。死ぬことはありません。それに貴方にとってとてもいいことが起こること間違えないでしょう」

「そのいい事ってなんだ!?」

「さあ、何でしょうね。それはあの建物に入ってからゆっくりと説明さえていただきます」

にこやかな表情がどこか不気味さを見せる案内人は言っていることがめちゃくちゃで理解しようにもできない状態であった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る