第3話
朝焼けがやけに鮮やかな色を出し、それを目の当たりにすると、カーテン側から吹いてくる風が優しく、いかにも朝という雰囲気が出ている。
その時間だけが男に静かな時を送らせているように思えた。
働かない頭を掻いて立ち上がると、リビングへ出て、淡々と朝ニュースを報道しているテレビを消すと流し台に向かう。
一杯の水を口に含み、カラカラに乾いた喉を潤した後、寝室に向かい服装を選んだ。
どれも地味で目立つことのないものばかりだけれど、本人としては気にいるものばかりだった。
九時頃、全ての準備を整え終えると玄関に出て郵便受けから新聞紙を取り出したと共に何かが滑り落ちたのを見た。
「何だ、これは…」
一言呟き落ちた小さなハガキを見てみると家の主の名前が書かれていた。
(西村庸一さま)
それだけ書かれたハガキは、送り先の住所も名前もない。
裏側を見ると日付と場所が書かれてある。
(七月二十四日、近くの公園にて待つ)
「何のこっちゃ…」
意味が分からず欠伸を一つつくとハガキを廊下に放り投げた。
そのまま靴を履き扉を開いた。
ズボンのポケットに手を入れ、道を歩いていると一人のボロい服装をした中年男性が立っていた。
何気なくそちらを見て見たが、どこか遠く、死んだような目をしている。
関わってはいけない雰囲気がでていて、真っ直ぐに道を行こうと思った時にその男から声をかけられた。
「…君、もしや西村君かね?」
突然見ず知らずのおじさんに呼び止められて不意を突かれた顔でそちらを見た。
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