第23話 発射
大地を揺らす歩みはゆっくりと何者にも邪魔されず進む。
揺れが大きくなっているのは確実に向かって来ている証拠。
「魔力充填50%。」
パネルの表示を読む王子の声にもどかしさが乗る。
「これは、改善の余地ありだな。」
少し戯けたのは、自分の苛立ちを恥じたからなのだろう。
視界に入っていた高い樹々が押し倒され、城魔獣が近くまで迫っていると告げた。
「銀の剣団! 退避しろ!」
王子の号令が飛ぶ!
が、銀の剣団は微動だにしない。
「命令違反ですな。」
団長が笑う。
「後で、軍法会議だ。」
王子も笑う。
「生きていたら、団員皆で出頭いたします。」
銀の騎士団の魔動人が敬礼で復唱した。
眼前まで迫った城魔獣は、その姿に似付かわしい巨大な爪をゆっくりと振り上げる。
「魔力充填100%!」
自分の体の反応が遅いとばかりに押されるスイッチ。
「増幅魔法陣展開!」
大砲の発射口の前に巨大な魔法陣が、光で描かれて行く。
ゆっくりと回り始めたのは完成した証。そして、その先にまた光が魔法陣を描く。それが繰り返され最終的に十個の魔法陣が列んだ。
「砲撃姿勢維持装置起動!」
両足の装甲が開き、内部に収納されていた杭が、地面へと深く打ち込まれる。
巨大な爪が死の一撃を繰り出す瞬間。
「喰らえ!」
発射のトリガーが引かれた。
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