第20話 比較

 団長は焦り、歓喜した。


 自分の魔動人は、全力で疾走しているはずなのに、新型魔動人の背中は遠退くばかり。

「これ程の違いがぁ!」

 そして、見えなくなる金色の背中。



 人間なら全力疾走なのだろうが、魔動人だから汗こそかかないが、酷使された機体が熱を帯びる。


 樹々の間を縫うように進み、茂みを掻き分けた先に見えた金色の魔動人。


「王子!」

 思わず、拡声器で呼びかけた。もし、魔獣の巣であれば危険な行為にほかならない。そして、駆け寄る団長の魔動人。


 金色の魔動人の傍で、真っ二つになった魔獣トーリスだったものを確認し、安堵する団長。


「団長。片付いたぞ。」

 王子も拡声器で答えた。

「そのようで。」

 あまりの性能差に嫉妬にも似た感情があったのか、返事に込もっていた。

「心配かけたな。」

 その事を感じたのか、王子は謝る。

「新型魔動人の性能、直に体験し、これ程の違いがあるとは…。」

「確かに、比較は机上だけだったからな…。満足のいく結果が得られた。」

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