第13話 初陣

 新型魔動人は朝日を浴び、金色(こんじき)が増す。用意された真新しい幅広の大剣と大型の盾も同じ色に輝く。左腰に装備している、もう一振り剣も同じ色だろう。


 その横で、

「ふぁーっ。」

 大欠伸(おおあくび)。

「まずい…。」

 周りに見られていないか『キョロキョロ』。

 皆は、出発の作業で忙しいみたいだ。助かった。初陣の前に欠伸だなんで不謹慎だと言われそうだし。

 出発が早朝なのもあるが、やはり寝不足なのは衣装のせいだ。


 広場に荷車がいくつも用意され、大きな荷物がいくつも乗せられていく。

 ふと、実際に戦うのは花形だが、こうやって補給品に日常品を用意してくれ、整備してくれる大勢の裏方があっての事だと改めて思う。


「準備終わりました〜。」

 積み込み作業が終わったようだ。

「分かった!」

 王子が手を振り答える。


 そういえば、荷車は用意されているのに引っ張らせる家畜は、まだ用意されていないのか?

 僕の疑問に答える様に、地面を通して伝わる微かな振動。


 次第に大きくなる振動。そして、この広場に繋がる道に現れる四脚の家畜と率いる人。

 ん? 何だか、周りの建物とのサイズ感がおかしい?

「我が部隊です。」

 王子の自慢らしく、その声に力がこもっていた。


 サイズの違和感。そう、人ではなく魔動人。銀色の魔動人の集団が四脚の家畜を率いていた。と、すると…、家畜のサイズも半端ない大きさと言う事か?


 銀色の魔動人は、新型よりも一回り程小さく飾り気が少ない。実用重視の様だ。こちらは、機体の色と同じ長槍(ランス)と大型の盾を手にし、左の腰には剣を装備している。

 先頭の魔動人は他とは異なり頭が帽子を被った様に高い。あの帽子はレストランの厨房での役目と同じだと判る。


 四脚の家畜は、僕の知識にある牛に酷似しているが、こっちは象よりも大きい。

 工房から機体を引き出すのに使った家畜に似ていると思っていたら、子供だったとか。城内では、このサイズは無理だろうなと。

 大人しい性格で、人の言葉も少し理解するとか。残念…。否、この家畜にとっての最大の武器が肉が不味いところ。

 それはそれは、死ぬ程に不味いとかで、他の動物にも襲わない。労働用の家畜としては、最強クラスだ。


 荷車に繋ぐ作業が始まると、銀色の魔動人の隊長(あの帽子付き機体のパイロット)が、顔見せに来た。短髪の如何にも、歴戦の猛者と言った雰囲気のガタイの良い戦士…、それが僕の第一印象。

 片膝を付き、

「我ら『銀の剣団』。シオン殿のお供をさせて頂きます。」

「よろしくお願いします。」

と、頭を下げる。

「簡単ではありますが、出立の準備がある故にこれにて。」

 去って行く後ろ姿も貫禄は十分だ。そういえば、第四話の部隊長もあんな雰囲気だったな…。


「シオン殿。こちらも出立の準備を…。」

 王子の言葉で、我に返る。そして、やって来た着付け担当者達。


「道中は、この衣装でお願いします。」

「えっ!?」

 その返答に、苛立ったのか、

「転生騎士シオン殿が、それらしい格好でなくて、どうしますか! 我らの威厳に関わりますぞ。」

「はぃ…。」

 迫力に圧され、小声で答えた。



 程なくして、出立の準備が完了した。


「では、行くぞ!」

 王子の号令に、

「おーっ!」

と、人が大気を震わせた。そして、次は魔動人達が大地を震わせ出立した。

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